看護師ナニーが指南!発達の多様性を理解するためにお子さまの“こだわり”や“苦手”を受け止める
私は看護師として、0〜12歳までのお子さまと関わってきました。発達障害児支援士の資格を取得してからは、療育現場で発達に課題のある未就学児の支援や、保護者からの発達相談にも日々対応しています。こうした経験をもとに、ナニーとして0歳〜小学生低学年までのお子さまを担当し、ご家庭での「安心」と「成長」のサポートに携わっています。
ナニーとしてお子さまと向き合う中で、一人ひとりの「違い」に気づかされる場面はたくさんあります。同じ年齢でも、好きな遊び、得意なこと、集中できる時間は本当にさまざま。ご家庭の育児方針や生活スタイルも十人十色です。
その中で、
- どうしてこのお子さまはこれに強くこだわるんだろう?
- もっと集中しやすい工夫はないかな?
と感じることはありませんか。
実は、こうした“こだわり”や“苦手”の背景には、発達特性※1が関係していることもあります。ナニーとして大切なのは、子ども同士を「比較」しないこと。“そのお子さまの今”をまっすぐに見つめ、一人ひとりのペースを尊重しながら、「できない」ではなく「どうすればできるか」を一緒に考える姿勢です。その丁寧なまなざしこそが、子どもの心に安心を生み、信頼関係を育てていく土台になります。
この記事では、発達の多様性を理解しながら、子どもの“その子らしさ”を支えるナニーの関わり方について、実際のケースを交えてご紹介します。
※1 ここでいう「発達特性」とは、発達のペースや得意・不得意の差が見られるお子さまを指します。
比較ではなく、「その子どもの良さ」を見つける
発達特性のあるお子さまの中には、うまくいかない経験を重ねるうちに自信を失ってしまう子どもも少なくありません。できない体験が積み重なると、「どうせ自分はできない」と感じてしまい、登園や登校への意欲を失うこともあります。
ナニーの役割は、そんなお子さまの小さな「できた!」を一緒に見つけていくこと。成功体験を丁寧に積み重ねることで、「またやってみよう」という前向きな気持ちを育てます。
【現場のリアル】ADHD傾向のあるお子さまとの関わり

たとえば、ADHD傾向のある4歳のお子さま。送迎の際、目に入ったものに興味が引き寄せられ、突然飛び出しそうになることがあります。バスの中でも落ち着かず、チャイムを押したがってしまう、そんな場面もありました。ナニーとしては、「危ない」「周囲に迷惑をかけないように」と焦ってしまう瞬間かもしれません。
しかし、そんな時こそ一度深呼吸をして、「最優先はこのお子さまの安全」と心を落ち着けることが大切です。「(ボディタッチが安心するお子さまであれば)手をつなぐ」「一緒に座席を選ぶ」「声かけのタイミングと量を変える」状況を冷静に見て、できる工夫を少しずつ積み重ねていくことが、プロの関わり方です。
そして、無理に「じっとして」と求めすぎず、できた時にはその都度、肯定の言葉を伝えてあげましょう。
ご家族の安心を支えるまなざし
発達に関する悩みは、ご家族にとっても大きなテーマです。ナニーがそのお子さまの良さを見つけ、具体的に伝えることで、ご家族自身の肯定感を支えることにもつながります。
「今日は集中して絵を描いていましたよ」
「お片付けを自分から始めていました」
そんな一言が、ご家族にとっての希望になることもあります。
ただし、ナニーは診断や評価を行う立場ではありません。発達特性の有無を本人や家族に伝えることは人権侵害にあたるため、絶対に避けましょう。
気になる行動があった場合は、事実だけを客観的に口頭やポピンズメモリーにて共有し、判断はご家庭や専門機関に委ねます。対応に迷った時は一人で抱え込まず、会社のコーディネーター、コンシェルジュに相談することが大切です。
「押し付けない」支援のために大切なこと:「心のバウンダリー(境界線)」を持つこと
お子さまもご家庭も十人十色。他の家庭と比較したり、「前はこうだったから」と経験則で決めつけるのは避けましょう。また、「こうなってほしい」という期待が大きすぎると、知らず知らずのうちに価値観を押し付けてしまうこともあります。
大切なのは、心のバウンダリー(境界線)を持つことです。「保護者がどうしてほしいか」「子どもがどう関わりたいか」を見極め、ナニー自身の思いと線引きをしながら支えることで、より健やかで信頼されるお世話ができます。
【エピソード】その子どもの「今」を見つめ続けた先に
前述のお子さまは、のちに保育園の先生の勧めで療育の相談につながり、現在は専門的なサポートを受けながら通園しています。保護者の方も「適切な支援につながれてホッとした」と話され、お子さま自身も「ナニーさんが来る日」を毎週心待ちにしているそうです。
その後も、ナニーは変わらず寄り添いながら、「できた瞬間」を一緒に喜び合っています。(※このエピソードは、実際の関わりをもとに一部脚色を加えた内容です。)
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まとめ:一人の子どもに、真摯に向き合える仕事

ナニーの仕事は、家庭ごと・お子さまごとにまったく異なる対応が求められる、決して簡単な仕事ではありません。けれど、どんな特性があっても「この子どもの今を支えたい」と向き合う姿勢こそが、ナニーの原点です。一人の子どもにここまで真摯に向き合えるのは、ナニーという仕事ならでは。
その日々の積み重ねが、お子さまの成長を支え、ご家族の安心を作り出しています。
あなたも、目の前のお子さまの“今”を大切にするナニーとして、一歩を踏み出してみませんか。現在、ナニーを募集しております。ご興味のある方はこちらをご覧ください→

この記事を書いた人
- Naoka
- 看護師、保育士、養護教諭の資格を持つナニーとして活動しています。これまで保育園や小学校、放課後デイサービスなど、さまざまな現場で経験を積んできました。現在ナニーのお仕事をしながら、療育施設にて自閉症スペクトラム症のお子さまたちの支援に取り組んでいます。
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