確定申告の時期が今年もやってきました。昨年からナニーを始めた方にとって、確定申告はどうやってやるのか、そもそも自分は確定申告が必要なのかという疑問を持っている方が多いのではないでしょうか。2025年(令和7年分)分の確定申告は税制改正によって基礎控除額が大幅に増え、ナニーさんにとっては手取りが増える(所得税がかかりにくくなる)うれしい変更も行われています。
今や確定申告は「スマホひとつで、隙間時間に完了させる」のが当たり前の時代になりました。かつてのような「難しい・面倒・税務署に並ぶ」というイメージは、もう過去のものです。
この記事では、2026年(令和8年)初頭の最新ルールに基づき、ナニーとして働き始めた方に向けて、確定申告の基礎知識や、確定申告が必要な人、確定申告の流れなどについて詳しく解説していきます。
お世話で使うナニーエプロンや文具代が経費になるのか、副業の場合はいくらから申告が必要なのかなど、ナニーさん特有の疑問にもおこたえします。お子様やご家族の笑顔を支えるプロのナニーとして、ご自身の大切な報酬もしっかり管理していきましょう。
確定申告とは
確定申告とは、1年間(1月1日から12月31日まで)に得た所得に対する税金を自分で計算して、税務署に申告・納付する手続きです。確定申告は税金を納めるだけでなく、払いすぎた税金を還付してもらうためにも必要です。
確定申告の申請時期は基本的に毎年同じ期間になりますが、2026年(令和8年)の確定申告期間は2026年2月16日(月)~3月16日(月)です*。申告義務のある人が申告期間内に申告しなかった場合は、加算税や延滞税などのペナルティが発生することがあります。早めの準備を心がけましょう。
参考)*国税庁HP
ポピンズのナニーさんで確定申告が必要な人
業務委託で働いているポピンズのナニーさんは基本的には、所得が95万円を超えると確定申告が必要になります(※2025年分の所得から基礎控除が大幅に引き上げられました)。会社員として働きながら副業で業務委託をしている場合は、副業の所得が20万円を超えるときに必要となります。ここでいう所得とは、収入金額から必要経費を差し引いた後の金額のことを指します。
【個人事業主やフリーランスで働いている場合】
収入ー必要経費=95万円以上
【会社員として働きながら副業で働いている場合】
収入ー必要経費=20万円以上
なぜ「95万円」が基準になったの?
近年の最低賃金の引き上げや物価上昇に伴い、働く人の手取りを増やすために2025年分からこれまで一律48万円だった「基礎控除」額が低・中所得者層を対象に大幅に引き上げられました。
- 所得が132万円以下の場合: 基礎控除額が合計 95万円 に!
- 所得が95万円以下の場合: 所得から95万円を引くと「0円」以下になるため、所得税はかからず、申告も不要です。
参考【2026年最新】所得別・基礎控除額の一覧表
2025年分(令和7年分)の所得税から、合計所得金額に応じて基礎控除額が段階的に設定されるようになりました。多くのナニーさんは、最も高い95万円の控除が適用されます。
| 合計所得金額※ | 基礎控除額 (2026年申告〜) | (参考)これまでの控除額 |
| 132万円以下 | 95万円 | 48万円 |
| 132万円超 〜 336万円以下 | 88万円 | 48万円 |
| 336万円超 〜 489万円以下 | 68万円 | 48万円 |
| 489万円超 〜 655万円以下 | 63万円 | 48万円 |
| 655万円超 〜 2,350万円以下 | 58万円 | 48万円 |
| 2,350万円超 〜 2,400万円以下 | 48万円 | 48万円 |
※「合計所得金額」とは、ナニーの報酬から経費を引いた額(+給与など他の所得がある場合はその合計)を指します。
この表を見るとわかる通り、以前の「48万円」という控除額が、ナニーさんの多くが該当する所得帯(132万円以下)では「95万円」と約2倍になり、「所得税0円」「確定申告不要」の範囲が広がりました。※2026年の申告書作成コーナー(e-Tax)では、収入を入力すればこの控除額は自動で適用されます。ご安心ください。
ナニーさんのための「経費」リスト
確定申告で「経費」として認められるのは「仕事をするために直接必要だった支出」です。「どこまで経費にしていいの?」と迷う方も多いですが、基本は「その支出が、お子様や保護者様のために必要だったか」で判断します。100円ショップで購入した折り紙一袋でも、仕事で使えば立派な経費です。レシートは捨てずに保管しておきましょう。
ナニーさんに関連する経費の一例は以下の通りです。
- 絵本、画用紙、折り紙、シャボン玉などの遊び道具にかかる費用(図書費、消耗品費)
- お客様宅へ向かうための電車やバス代などの交通費(旅費交通費)
- お世話に使用するナニーエプロンやハンカチ、白いトップス、白い靴下、カバンなど(被服費、消耗品費)
- ペンやノートなど、お世話で利用する文房具などの消耗品代(事務用品費)
- 保育・教育に関連する本やセミナー参加の費用(図書研究費、研修費)
- 事前電話や実績入力に使うスマートフォンの通信料(通信費)
必要経費になるかどうか迷ったら、「その支出が事業に関連するかどうか」という点で判断しましょう。
【FPからのワンポイントアドバイス:按分(あんぶん)とは?】
スマホ代や仕事兼用の衣類など、「仕事でも私生活でも使うもの」については、全額を経費にすることはできません。 例えば、スマホの利用時間の半分が仕事関連であれば、「スマホ代の50%を経費にする」といった考え方をします。これを「家事按分」と呼びます。確定申告の際に「なぜこの金額になったのか」を説明できるよう、自分なりの基準(週5日フルタイムで使っているから7割、など)を決めておきましょう。
確定申告をする前に、理解しておきたい3つのポイント
確定申告では、日常生活で聞きなれない用語が多く出てきます。初めて確定申告をする時に混乱してしまう方もいるかもしれません。確定申告をする前に、理解しておきたいポイントを3つまとめました。
ポイント1:収入と所得の違い
まず、収入と所得の違いについて理解をしましょう。収入は労働やサービスの対価として受け取る総額を指します。会社員の場合は給与やボーナスの合計、個人事業主の場合は売上のことです。一方、所得は収入から必要経費や控除を差し引いた金額を指します。
そして、所得は法律上10種類に区分されています。この種類の違いも確定申告の時は理解しておくことが非常に大切です。10種類の中でも特にナニーさんに知っておいてほしい3つの所得を紹介します。
- 給与所得:会社員やアルバイトの給料、賞与から生じる所得
- 事業所得:個人事業主やフリーランスの事業から生じる所得
- 雑所得:他の9種類に当てはまらない所得(年金、原稿料など)
これらの所得は、各々で課税所得の計算方法が異なります。例えば給与所得には給与所得控除が適用され、事業所得と雑所得では実際の必要経費を差し引いて計算します。
ポピンズのナニーさんの収入は「事業所得」または「雑所得」に該当します。
ポイント2:事業所得と雑所得の違い
事業所得とは、個人事業主やフリーランスなど、事業を営むことで得られる所得です。一方、雑所得は副業や趣味などから得られる小規模な所得を指します。自分が事業所得と雑所得のどちらかで悩んだら、以下の基準で判断しましょう。
- 事業所得:事業として継続的な収入である
- 雑所得:一時的な収入である
また、収入が300万円以上で帳簿がある場合、ほぼ事業所得とみなされます。そして、開業届を提出していなくても事業所得として申告できる可能性はありますが、その際は適切な帳簿書類の保存や事業の実態を示す証拠が重要になります。ただし、開業届を提出すると、正式に事業所得として認められ、税務上のメリットを最大限に活用することができるので、開業届を提出しておくことが推奨されます。
事業所得と雑所得の明確な違いについては国税庁の「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)をご覧ください。
ポイント3:白色申告と青色申告の違い
確定申告には白色申告と青色申告の2種類があります。
白色申告は、申告手続きが比較的簡単で、特別な申請や複雑な帳簿作成が不要です。その反面、節税効果はありません。一方で青色申告は、複式簿記による記帳が求められ、青色申告決算書や貸借対照表など、より詳細な資料を提出しなければいけません。ただし、最大65万円の青色申告特別控除や、赤字の3年間繰越しなど、節税効果が非常に高いです。青色申告は会計の知識がないと難しそうに思うかもしれませんが、会計ソフトを使うことで初心者でも簡単に帳簿付けや申告資料の作成を行うことができます。青色申告は節税したい方にはおすすめです。また、初めて青色申告をする場合は、事前に税務署で申請が必要です。青色申告を行う年の3月15日までに、所管の税務署へ「青色申告承認申請書」と「開業届」を提出する必要があります。
はじめての確定申告であれば、白色申告から始めるとよいでしょう。
確定申告の流れ
これまで確定申告についての基礎知識を紹介してきました。ここからは確定申告の流れを簡単に説明します。
1.必要書類の準備
まず、以下の書類を用意します。
- 確定申告書(国税庁のウェブサイトからダウンロードか税務署で入手)
- 収入に関する書類(給与明細、源泉徴収票など ※ポピンズのナニーさんは支払証明書)
- 経費の領収書
- マイナンバーカードまたは本人確認書類
2.費用と経費の計算
1年間の収入を合計し、必要経費を差し引いて所得金額を計算します。会計ソフトを使用すると簡単に計算することができます。
3.確定申告書の作成
確定申告書に以下の情報を記入します
- 個人情報(氏名、住所、マイナンバーなど)
- 所得金額
- 各種控除(基礎控除、医療費控除など)
確定申告書は国税庁のホームページ「確定申告書作成コーナー」から作成できます。また、市販の確定申告ソフトや会計ソフトでも作成可能です。
4.申告書の提出
作成した確定申告書を以下のいずれかの方法で提出します
- e-Tax(電子申告)
- 税務署への郵送
- 税務署への持参
5.納付または還付
計算結果に基づき、納税が必要な場合は期限内に納付します。還付がある場合は、指定した口座に振り込まれます。
不明点があれば税務署に相談するか、税理士のアドバイスを受けることをおすすめします。
確定申告の参考例

確定申告の方法によって、税金の計算や手続きが大きく異なります。ここでは、白色申告で確定申告するナニーAさんと、青色申告するナニーBさんの例を見てみましょう。
2026年に提出する「2025年分」の申告では、新しい基礎控除額を適用して計算します。
【モデルケース】
2025年度の年間収入150万円、必要経費は交通費22万円、消耗費5万円、通信費1万円の合計28万円だった場合
所得金額 = 150万 - 28万 = 122万円
※所得が132万円以下のため、基礎控除95万円が適用されます。
◆白色申告をするナニーAさん
- 課税所得の計算
課税所得 = 122万円(所得) - 95万円(基礎控除) = 27万円 - 所得税の計算
27万円 × 5% = 13,500円 - 復興特別所得税
13,500円 × 2.1% = 283円 - 最終的な納税額
13,500円 + 283円 = 13,783円(※100円未満切り捨てで13,700円)
◆青色申告をするナニーBさん(65万円控除適用の場合)
- 所得金額の計算
122万円(所得) - 65万円(青色控除) = 57万円 - 課税所得の計算
57万円 - 95万円(基礎控除) = 0円(マイナスになるため) - 最終的な納税額 0円
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ナニーAさん(白色申告)の納税額: 13,000円
ナニーBさん(青色申告)の納税額: 0円
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今回の改正により、白色申告のAさんの納税額も大きく減額になり、青色申告を活用しているナニーさんは、以前よりもさらに広い年収幅で「所得税0円」を実現できるようになりました。
この例から、青色申告を選択することで、同じ収入と経費の条件でも大きな節税効果が得られることがわかります。ただし、青色申告には複式簿記での記帳や青色申告決算書の作成など、より詳細な経理処理が必要になります。
*なお、実際の計算では、個人の状況に応じて他の所得控除や税額控除が適用される可能性があるため、あくまで一例として参考にしてください。
まとめ

確定申告は、業務委託として働くナニーさんにとって重要な手続きです。本記事では、確定申告の基本から、確定申告の簡単な流れまで詳しく解説しました。
初めての確定申告は複雑に感じるかもしれませんが、一度慣れれば大きな負担にはなりません。国税庁のウェブサイトや会計ソフトを活用すれば、比較的簡単に手続きを行うことができます。ただし、不明点がある場合は、税務署に相談するか税理士のアドバイスを受けましょう。適切な確定申告を行うことで、余計な税金を払わずに済むだけでなく、将来的な税務調査のリスクも軽減できます。
ナニーさんとしての仕事を楽しみながら、確定申告もしっかりと行い、安心して働ける環境を整えましょう。

この記事を書いた人
- Sawa
- 看護師とFP2級の資格を保有しています。ポピンズでのナニー経験を経て、アメリカで1歳と9歳のベビーシッターを1年間していました。趣味は海外旅行と株式投資を中心とした資産形成です。看護、保育、お金に関する知識と経験を活かして多様な視点から記事を執筆しています。
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