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ポピンズのナニーさんは確定申告が必要?FPが分かりやすく解説!

2025.02.27
  • ナニー
  • 給料・収入

確定申告の時期が今年もやってきました。昨年からナニーを始めた方にとって、確定申告はどうやってやるのか、そもそも自分は確定申告が必要なのかという疑問を持っている方が多いのではないでしょうか。一度慣れてしまえば確定申告はそこまで大変な作業ではありませんが、初めてだと何からすればいいのか分からず悩んでしまう方もいるかもしれません。

今回は、ナニーとして働き始めた方に向けて、確定申告の基礎知識や、確定申告が必要な人、確定申告の流れなどについて詳しく解説していきます。

確定申告とは

確定申告とは、1年間(1月1日から12月31日まで)に得た所得に対する税金を自分で計算して、税務署に申告・納付する手続きです。確定申告は税金を納めるだけでなく、払いすぎた税金を還付してもらうためにも必要です。
確定申告の申請時期は基本的に毎年同じ期間になりますが、2025年(令和7年)の確定申告期間は2025年2月17日(月)~3月17日(月)です*。申告義務のある人が申告期間内に申告しなかった場合は、加算税や延滞税などのペナルティが発生することがあります。

参考)*国税庁HP

ポピンズのナニーさんで確定申告が必要な人

業務委託で働いているポピンズのナニーさんは基本的には、所得が48万円を超えると確定申告が必要になります。会社員として働きながら副業で業務委託をしている場合は、副業の所得が20万円を超えるときに必要となります。ここでいう所得とは、収入金額から必要経費を差し引いた後の金額のことを指します。

【個人事業主やフリーランスで働いている場合】

収入ー必要経費=48万円以上

【会社員として働きながら副業で働いている場合】

収入ー必要経費=20万円以上

必要経費は人によって異なります。ナニーさんに関連する必要経費の一例は以下の通りです。

  • おもちゃやクレヨン、絵本、折り紙などの遊び道具にかかる費用
  • 電車やバス代などの交通費
  • 働くときに使用するエプロンやハンカチ、カバンなどの被服費用
  • ペンやノートなど、仕事で利用する文房具などの消耗品代
  • 業務に関連する本やセミナー参加の費用
  • 携帯電話代(仕事で使用している割合のみ)

必要経費になるかどうか迷ったら、「その支出が事業に関連するかどうか」という点で判断しましょう。

参考)必要経費の例

確定申告をする前に、理解しておきたい3つのポイント

確定申告では、日常生活で聞きなれない用語が多く出てきます。初めて確定申告をする時に混乱してしまう方もいるかもしれません。確定申告をする前に、理解しておきたいポイントを3つまとめました。

ポイント1:収入と所得の違い

まず、収入と所得の違いについて理解をしましょう。収入は労働やサービスの対価として受け取る総額を指します。会社員の場合は給与やボーナスの合計、個人事業主の場合は売上のことです。一方、所得は収入から必要経費や控除を差し引いた金額を指します。

そして、所得は法律上10種類に区分されています。この種類の違いも確定申告の時は理解しておくことが非常に大切です。10種類の中でも特にナニーさんに知っておいてほしい3つの所得を紹介します。

  • 給与所得:会社員やアルバイトの給料、賞与から生じる所得
  • 事業所得:個人事業主やフリーランスの事業から生じる所得
  • 雑所得:他の9種類に当てはまらない所得(年金、原稿料など)

これらの所得は、各々で課税所得の計算方法が異なります。例えば給与所得には給与所得控除が適用され、事業所得と雑所得では実際の必要経費を差し引いて計算します。

ポピンズのナニーさんの収入は「事業所得」または「雑所得」に該当します。

ポイント2:事業所得と雑所得の違い

事業所得とは、個人事業主やフリーランスなど、事業を営むことで得られる所得です。一方、雑所得は副業や趣味などから得られる小規模な所得を指します。自分が事業所得と雑所得のどちらかで悩んだら、以下の基準で判断しましょう。

  • 事業所得:事業として継続的な収入である
  • 雑所得:一時的な収入である

また、収入が300万円以上で帳簿がある場合、ほぼ事業所得とみなされます。そして、開業届を提出していなくても事業所得として申告できる可能性はありますが、その際は適切な帳簿書類の保存や事業の実態を示す証拠が重要になります。ただし、開業届を提出すると、正式に事業所得として認められ、税務上のメリットを最大限に活用することができるので、開業届を提出しておくことが推奨されます。

 参考)副業300万超は帳簿があれば事業所得になる?

事業所得と雑所得の明確な違いについては2022年10月に国税庁が発表した「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)をご覧ください。

ポイント3:白色申告と青色申告の違い

確定申告には白色申告と青色申告の2種類があります。

白色申告は、申告手続きが比較的簡単で、特別な申請や複雑な帳簿作成が不要です。その反面、節税効果はありません。一方で青色申告は、複式簿記による記帳が求められ、青色申告決算書や貸借対照表など、より詳細な資料を提出しなければいけません。ただし、最大65万円の青色申告特別控除や、赤字の3年間繰越しなど、節税効果が非常に高いです。青色申告は会計の知識がないと難しそうに思うかもしれませんが、会計ソフトを使うことで初心者でも簡単に帳簿付けや申告資料の作成を行うことができます。青色申告は節税したい方にはおすすめです。また、初めて青色申告をする場合は、事前に税務署で申請が必要です。青色申告を行う年の3月15日までに、所管の税務署へ「青色申告承認申請書」と「開業届」を提出する必要があります。

確定申告の流れ

これまで確定申告についての基礎知識を紹介してきました。ここからは確定申告の流れを簡単に説明します。

1.必要書類の準備

まず、以下の書類を用意します。

  • 確定申告書(国税庁のウェブサイトからダウンロードか税務署で入手)
  • 収入に関する書類(給与明細、源泉徴収票など ※ポピンズのナニーさんは支払証明書)
  • 経費の領収書
  • マイナンバーカードまたは本人確認書類

2.費用と経費の計算

1年間の収入を合計し、必要経費を差し引いて所得金額を計算します。会計ソフトを使用すると簡単に計算することができます。

3.確定申告書の作成

確定申告書に以下の情報を記入します

  • 個人情報(氏名、住所、マイナンバーなど)
  • 所得金額
  • 各種控除(基礎控除、医療費控除など)

確定申告書は国税庁のホームページ「確定申告書作成コーナー」から作成できます。また、市販の確定申告ソフトや会計ソフトでも作成可能です。

4.申告書の提出

作成した確定申告書を以下のいずれかの方法で提出します

  • e-Tax(電子申告)
  • 税務署への郵送
  • 税務署への持参

5.納付または還付

計算結果に基づき、納税が必要な場合は期限内に納付します。還付がある場合は、指定した口座に振り込まれます。

不明点があれば税務署に相談するか、税理士のアドバイスを受けることをおすすめします。

確定申告の参考例

確定申告の方法によって、税金の計算や手続きが大きく異なります。ここでは、白色申告で確定申告するナニーAさんと、青色申告するナニーBさんの例を見てみましょう。

2024年分の確定申告では定額減税により所得税が1人当たり3万円控除されます。これを受けて24年分の確定申告書には㊹番に「令和6年分特別税額控除」という欄が新設されています。会計ソフトやe-Taxで申請する場合は自動的に定額減税が計算されますが、手書きの場合は減税の対象人数に3万円をかけた金額を記入する必要があるので注意しましょう。今回は定額減税を踏まえてAさんとBさんを比較します。

【モデルケース】2024年度の年間収入は150万円、必要経費は交通費20万円、消耗費5万円、通信費3万円の合計28万円だった場合

白色申告をするナニーAさん

  1. 所得金額の計算

事業所得=収入ー必要経費
=150万円 ー28万円

=122万円

  1. 課税所得の計算

課税所得=事業所得ー所得控除
=122万円 ー48万円 (基礎控除)

=74万円

  1. 所得税の計算

課税所得74万円に対する所得税率は5%
=74万円× 5%

= 37,000円

  1. 復興特別所得税

復興特別所得税=所得税額 × 2.1%
=37,000円 × 2.1% 

=777円

  1. 最終的な納税額

納税額=所得税額+復興特別所得税定額減税ー定額減税
=37,000円 + 777円ー3万円

 = 7,777円

青色申告をするナニーBさん

  1. 所得金額の計算

事業所得=収入ー必要経費ー青色申告特別控除
=150万円- 28万円 -65万円

=57万円

  1. 課税所得の計算

課税所得=事業所得ー所得控除
=57万円 -48万円(基礎控除)

=9万円

  1. 所得税の計算

課税所得9万円に対する所得税率は5%
=9万円 × 5% 

=4,500円

  1. 復興特別所得税

復興特別所得税 = 所得税額 × 2.1%
=4,500円 × 2.1% 

=94円

  1. 最終的な納税額

納税額=所得税額+復興特別所得税定額減税ー定額減税
=4,500円 + 94円ー3万円
=0円(全額減税)

ナニーAさん(白色申告)の納税額: 7,777円

ナニーBさん(青色申告)の納税額: 0円

青色申告を選択したナニーBさんは、65万円の青色申告特別控除を受けられたため、課税所得が大幅に減少しました。さらに、定額減税の適用により、最終的な納税額が0円となりました。

この例から、青色申告を選択することで、同じ収入と経費の条件でも大きな節税効果が得られることがわかります。ただし、青色申告には複式簿記での記帳や青色申告決算書の作成など、より詳細な経理処理が必要になります。

*なお、実際の計算では、個人の状況に応じて他の所得控除や税額控除が適用される可能性があるため、あくまで一例として参考にしてください。

まとめ

確定申告は、業務委託として働くナニーさんにとって重要な手続きです。本記事では、確定申告の基本から、確定申告の簡単な流れまで詳しく解説しました。

初めての確定申告は複雑に感じるかもしれませんが、一度慣れれば大きな負担にはなりません。国税庁のウェブサイトや会計ソフトを活用すれば、比較的簡単に手続きを行うことができます。ただし、不明点がある場合は、税務署に相談するか税理士のアドバイスを受けましょう。適切な確定申告を行うことで、余計な税金を払わずに済むだけでなく、将来的な税務調査のリスクも軽減できます。

ナニーさんとしての仕事を楽しみながら、確定申告もしっかりと行い、安心して働ける環境を整えましょう。

この記事を書いた人

Sawa
看護師とFP2級の資格を保有しています。ポピンズでのナニー経験を経て、アメリカで1歳と9歳のベビーシッターを1年間していました。趣味は海外旅行と株式投資を中心とした資産形成です。看護、保育、お金に関する知識と経験を活かして多様な視点から記事を執筆しています。

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