子育て経験、保育士経験を活かしてキャリアチェンジ、ナニーのお世話とはご家庭の幸福を引き受けること

自身の子育てがひと段落した後、保育士の経験を積み、現在はスーパーナニーとしてご活躍のBさん。高いプロ意識とお子さまへの愛情豊かなまなざしが高い評価を得ています。転身の理由とそれぞれのお仕事の魅力を語っていただきました。
専業主婦から保育士へ
─ナニーのお仕事を始めて8年になるそうですね。どういうきっかけで、ナニーの仕事と出会ったのですか?
私は銀行に勤めておりましたが、結婚退職をしてから20年間、女の子と男の子、2人の子育てに専念してきました。息子が16歳になって留学する時に、「もう僕は大丈夫だから、これからは自分のために仕事をしてみたら?」と空港で言われ、自分には何かできるのだろうか、と思いまして。
もともと家政系の学校を出ていましたので、発達心理学、家族関係学に興味があり、子育て中には放送大学で認知心理学や言語心理学を学んでいたんです。そんな時、たまたまテレビを観ていたら、働くお母様がたが、お子様の預け先がなく困っていることを知りました。
私自身が専業主婦だったので、働くお母様に対するリスペクトの気持ちもありましたし、お手伝いができたらいいなという思いが沸き上がりまして。その時はポピンズを知らなかったので、別のベビーシッター会社に入りました。
ベビーシッターとして仕事をする中で、保育園の中のことを初めて知りました。我が子を通わせていた幼稚園では先生方は「おはようございます、さようなら」とおっしゃるのに対し、保育園の先生方は保護者に対して「行ってらっしゃい、おかえりなさい」とおっしゃいます。誰にも分け隔てのない「行ってらっしゃい、おかえりなさい」に衝撃を受けました。
お母様がたがお子さまを預けてすぐに仕事に行かれる姿を見て、忙しさを理解しつつ、子どもにとって保育園が生活の重要な場所であることを強く感じ、保育士の仕事に興味をもちました。当時、保育士資格を持っていませんでしたので、通信教育で勉強し、保育士免許を取得し、希望していた認証保育園で働くことになりました。
—実際に保育士のお仕事を経験されてどのように感じられましたか?
園児たちが、きちんと気持ちの切り替えができることに驚きました。
例えば、朝の早いうちはまだ登園してくる園児が少ないから保育士に甘えてくるけれど、他の園児が続々登園してくるとぴたっと甘えるのをやめるとか、他にどんなにやりたいことがあっても、時間が来たらやらなければいけないことをきちんとやる。それが1歳児でもできる。
園児の「思い通りにはできない」という気持ちを、集団の中でどうフォローして過ごしていくか、集団の中で育ちの応援をするというところが素晴らしいと思いました。そういったところから信頼も生まれ、お片付けに関しても、園児から「先生、一緒にやって!」と。トイレトレーニングも、集団生活の中で自然に進めていくので、お友達がトイレに行くのを見て、「やってみよう!」と思える環境があって、自分からトイレに座るとか。全てにおいて未知の世界でした。
保育士からナニーへキャリアチェンジ

—保育士としてお仕事をされる中、どのタイミングでナニーのお仕事に興味を持たれたのでしょうか。
認証保育園で働いていたので、ぜひ、認可園も見てみたい、働いてみたいと思い、保育士のセミナーに出かけたとき、ポピンズナーサリースクールで配布される資料を見て、素敵だな、と直感しました。ポピンズナーサリースクールの保育士さんの制服は若草色のジャンパースカートです。なぜスカートなのかという質問に対し、若い男性社員の方が「スカートは大切なお子さまをお預かりする正装で、先生方の身のこなしも美しくなるんですよ」と、説明され、素敵だわと思って。いずれはベビーシッターになりたいという気持ちがあったので、やるならポピンズのナニーだなと思いました。
でもその前に、認可園の経験もしておきたいと思い、社会福祉法人の認可園に勤めながら、ポピンズのナニーのお仕事と両立することにしました。約半年ほど経った頃でしょうか、息子に「ポピンズで楽しそうに仕事しているよね」と言われて、自分でもそうかも、と思いまして。
お子さまの躾であったり、教育であったり、そういったところに関わっていけるナニーのお仕事に魅力を感じましたし、息子の言葉に後押しされ、ナニーのお仕事に専念しようと決めました。
—認証園で約2年、認可園で半年お仕事をされて、保育士とナニーの一番の違いは何だとお考えでしょうか
ナニーは1人のお子さまだけに集中できることです。そのお子さまに合わせたお世話ができます。
例えば午前睡でお子さまが寝ている場合、ナニーでしたらそのまま寝かせてあげられますが、保育園の場合は起こしてお散歩に連れ出さなければなりません。そこは大きな違いがあると思います。寝かしつけも、ナニーなら好きなだけ抱っこして差し上げますが、保育園では基本はねんねしてトントンで寝かしつけます。
小さければ小さいほど、お子さま自身のリズムに合わせて差し上げられるのがナニーの良い点ですね。
—ナニーのお仕事の中で難しさを感じることはありますか?
初めてのお宅に訪問した際、初対面のお子さまが私のことを警戒されている時でしょうか。
私は、基本的にリビングに入るまでに、お母様から信頼を得る、ということを目標にしております。お母様からお子様をお預かりする瞬間までに、まずはお母様に信頼していただくことが第一なんです。この人は、ママと仲良しなんだってお子さまが思ってくださるようにというのを努力目標にしています。
そのためには玄関先でのご挨拶がとても重要ですので、丁寧にご挨拶して、お母様にもお子様にも安心していただけるよう努めています。
洗面所に入る前からお子さまにも目線をあわせ、「○○ちゃん、アワアワ貸してね、手を洗ってきますね」、「今日は楽しく遊びましょうね」と、自然なお声がけをすることもポイントです。
—ナニーさんは教育ベビーシッターとしてお子様の発達を促すかかわりを実践されているそうですが、どのようにして、お子さまのモチベーションを高めているのでしょうか。
基本的に、私からアクションを起こすのではなく、まずお子さまのお気持ちを最優先します。
おうちでできるアプローチとして、「○○ちゃんのお気に入りのおもちゃ、教えてくれる?」と言って、お子さまの好きなものを知ります。そのおもちゃで一緒に遊んでいる間に、「こういうのもやってみたいな」という興味を引き出したり、違った使い方を提案したりします。また、絵本を読んでいる際に、関連する歌を歌って、お子さまの興味を広げていきます。
こうして、お子さまの好きなものから世界を広げていくようにしています。
今、2歳さんのお世話もしているのですが、おむつ替えを嫌がることがあります。「いやっ」とおっしゃる場合は、「お布団を先に片付けて、その後で替えようね」と声をかけ、見える場所に一度離れます。タイミングを変えて様子を見るんです。
再び「替えようね」と促しても嫌がられる場合は2種類の絵柄のおむつを持ってきて、「クレヨンにする?それともチョウチョ?」と、自分で決めてもらうことでスムーズに替えられることもあります。
時間管理の大切さ

—早朝や夕方のお世話をされているそうですね。時間管理が大変だと思うのですが、お世話中のタイムスケジュールについて教えてください。
今、お世話に伺っているうちの1軒は、2歳の女の子と、6歳の男の子のごきょうだいのお世話です。早朝のお世話の際は朝7時にお宅に伺い、まず浴室へ行き、前夜に干してある洗濯物を片付け、上のお子さまを食卓に着く前にトイレにお連れします。
お母様がご在宅の日はお母様が朝食をご準備され、ご一緒に召し上がるので、その間に、寝室、廊下などに掃除機をかけます。お食事が終わってから、歯磨き、着替え、洗濯機のスイッチを入れて、食器を洗い、洗濯物を浴室乾燥にセット。忘れ物がないように登園準備をして8時45分にはお宅を出発、9時までに保育園へ送り届けるという、まるでタイムトライアルレースです。
時間通りお世話を進めるためにお皿を洗いながら、かくれんぼをすることもあります。「一回だけかくれんぼしようね」と約束をして、ゆっくり20秒を数える間に家事をして。洗面所へ歯磨きに行くときは電車ごっこで、リビングに帰る時は「今日は何で帰る?」「抱っこでコアラ!」「はい、今日はどこ産のコアラにしますか?」「はい、シドニーからコアラ到着します!」などと遊びを交えてお子様の気分をあげながらお世話を進めています。
—家事をしながらの登園準備は大変そうですね。短時間の場合、エデュケアはどのように実践されているのですか?
とても慌ただしい朝ですが、エデュケアは生活の中にあると思っていますので、“靴下履く競走”や、“コート着る競走”など、お支度にも遊びを盛り込んでいます。
私自身、学生時代も社会人になってからも合唱部に入っていましたので、お世話中はかなりの時間、お子さまと一緒に歌っています。お子さまから「やまびこさん歌って!」などとリクエストされることもあるんですよ。限られた時間の中でやるべきことを「こなす」ようにならないために、朝のお支度を進める時間も豊かな時間になるように、私にとって歌は大切なホスピタリティなんです。
登園の際には一緒に手を繋いで歩きながら、お子さまと右左を確認することや、横断歩道を渡る時は走らず歩くことなど、交通ルールやマナーもしっかりお伝えしています。手を繋ぎたがらないお子さまも多い中、すんなり手を繋いでくださるのって、信頼関係ができているからなのかなと思います。
—働き方はご自身でどのように調整されていますか
ナニーとしての経験を8年間積んできた中で、ライフステージによって生活も変化してきました。最初は日中のお世話が中心でしたが、子どもが成長した今は朝か夕方のお世話にシフトしました。意識して自分が楽しむ時間も取るようにしています。
今、日中はおもてなし料理や韓国料理を習いに行ったり、紅茶教室に通ったりしています。さまざまなお稽古事も楽しみつつ、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができています。
また、父と母の体調が優れなかった時は、ダイレクト送迎などの短時間の仕事にシフトしていました。保育園だと勤務時間が長いですが、ナニーのお仕事であれば自分で稼働時間帯も自由に選べるのが魅力だと思います。
—この仕事を通して得たやりがいを教えていただけますか
直接お客様から「Bさんの日は安心感が違う」と言われたことが一番嬉しかったです。今も時々お伺いしていますが、0歳の頃からお世話をしてきた男のお子様が、もう5歳になられました。当時は日中のお世話をしながら、外遊びをしたり、ご自宅ではたくさん歌を歌ったり手遊びをしたりしていました。
今では幼稚園児になり、歌う曲も乳幼児の頃とは変わりましたが、「Bさん、こんな歌を歌ったよね。僕、覚えてるよ」と話してくれることがあります。「あんな遊び、こんな手遊びをやったよね」と懐かしそうに話してくれるのがとても嬉しいです。
現在、お預かりしている2歳のお子さまとも一緒に歌を楽しんでいます。お母様とご一緒の時にも「これね、Bさんに習ったの」と歌を披露してくれていると伺いました。とても嬉しい瞬間です。
研修講師として新人ナニーさんに思うこと

—新人研修の講師や実地研修のトレーナーもされているそうですが、新人ナニーさんに対して感じることはありますか?
さまざまな経歴をもつ新人ナニーさんがいらっしゃって、本当に不安でいっぱいな方、やる気に満ちている方、保育園で働いていたから大丈夫という方、いろいろな方がいらっしゃる中で、あまり出過ぎないようにと思って研修を行っています。
ただ、不安そうな方には先導して、そのナニーさんの笑顔を引き出すようにしています。
皆さん本当にやる気に満ちていらっしゃるので、こちらが初心に返れて、勉強になりますね。
—指導する側として特に意識されていることはありますか。
私自身が最初に感じたブランドイメージを伝えることを大切にしています。8年前に研修を受けた際、この会社のブランドイメージを強く感じ、それを継続していく必要があると考えました。今は、その想いをどのように伝えていくかを意識しています。
身だしなみの面では、たとえば清潔感が伝わる白いトップスを着るということが新人さんにもできる身だしなみの第一歩として、とても大事なことだと思っています。白でなければならないわけではないけれど、お客様の第一印象は最初の5秒で決まるため、その小さな違いが大きな影響を与えることもあります。まず、身だしなみから整えていただくことを自然な形でアドバイスしています。
—ご自身ではどのようなエデュケアを実践されていますか
折り紙やモールなどを準備していくこともありますが、基本的には生活の中にあると捉えています。部屋にあるもの、道にあるもの、日常のものをさまざまな視点で観察し、それを取り入れてお話をしています。
例えば、道路のマンホールは「丸い形をしているね」とか、「この中にピョンって飛べるかな」とか、一緒に考え、見たり感じたりしたことを共有しています。また季節によって、秋に赤い葉っぱがあったら「もみじ」の歌を歌うことで、目で見たもの「赤い葉っぱ」と、耳で聞いたもの「歌や音楽」がつながり、感受性が育ちます。
タクシーで送迎する時は音が出る絵本や、幼稚園の送迎の時は折り紙、それをお友だちの分も持っていきます。するとバスに乗るなり、お友だちと静かに折り紙を始めることもあり、社会性を伸ばすきっかけにもなっています。
机に1対1で座って、「さあ、これをやりましょう」というだけがエデュケアではなく、私は生活の中で自然に取り入れるエデュケアを大切にしています。
新人ナニーさんに向けては、ナニーのお仕事をしていて、集団保育にも触れたいと思った時には、ポピンズナーサリースクールの保育補助のお仕事を受けられることをお伝えしたいです。ポピンズナーサリースクールはエデュケア実践の場でもあり、ベテラン保育士さんはもちろんなのですが、お母さまの年齢に近い保育士さんがお子様に接する様子やお声がけなどが私には新鮮で、とても学びが多いのです。1対1の保育も集団保育も、さまざまな保育に触れることができるのはポピンズならではの良さだと思います。
お世話とは幸福を引き受けること
—お世話をするにあたって、心がけていらっしゃることはありますか。
私にとってお世話をお引き受けするということは、単にお子さまを見守るだけでなく、そのお時間のご家庭とお子さまの幸福を預かることだと考えています。
もちろん、命を守ることは基本ですが、それだけではなく、お子さまが安心して楽しく幸せに過ごせる時間を提供することも大切な使命です。
仕事をする上では、相談すべきことや学ぶべきことが多くありますが、自信を持って幸福を引き受けられるのは、会社のサポートがあるからこそだと感じています。
また、「心構え」という言葉がありますが、私はそれを「心が前」と捉え、常に前向きな気持ちでお子さまと向き合うことを大切にしています。自由な発想を尊重し、現場に任せて応援してくれる会社の存在も、より良いお世話につながっていると感じています。
—貴重なお話をありがとうございました。最後に、これからの目標を教えていただけますか。
今後は食育にも取り組んでいきたいと考えています。私たちナニーは食の場に立ち会うことが多く、特に私は朝と夕方の時間に、生活の基盤を整えるお世話をしています。以前、お客さまに季節の食材や栄養の話をした際、「食卓での話題が豊富ですね」と喜んでいただいたことがありました。それをきっかけに、お子さまの食の面にも力を入れたいと思い、食育インストラクターの資格を取得しました。
自分を大事にするという意味でも、仕事をするための時間と、自分の楽しみの時間を両方確保していけることはとても重要だと思っています。ポピンズのナニーは定年がなく、自分で選べるということも魅力ですので、求めて頂ける限りは続けていこうと思っています。
ー歌うような軽やかな語り口がとても素敵なBさん。ライフステージの変化に合わせて、より自由に、そして自分らしく働ける「ナニー」という選択をし、お仕事を楽しんでいらっしゃいます。あなたも、子育ての経験や保育の知識を活かしながら、ナニーとして柔軟な働き方を始めてみませんか?ご興味のあるかたはこちらをご覧ください→

この記事を書いた人

- なおこ
- 小学校に通う男の子のお母さんナニーです。活発なお子さまのお世話が得意なので、日々一緒に楽しく遊んでいます。 お子さまに寄り添い、お母様に共感し、みんなが笑顔になるような発信ができればと思っております。