保育士からの転職は可能?経験を活かせる職種を紹介
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様々な事情から保育士の仕事を退職しようか、と考える方もいるでしょう。保育園の雰囲気が合わなかったり、ライフステージが変わったりして転職している方も少なくありません。しかし、いざ転職を考えたときに「経験を活かせる?」「異業種でも働ける?」と悩む方も多いかもしれません。
この記事では、保育士の転職について解説します。
保育士からの転職は可能?
保育士の転職は珍しいことではなく、やる気さえあればさまざまな職種への転職が可能です。
保育士は子どもの成長を側で見守れる、やりがいのある仕事です。しかし、さまざまな理由により保育園で働き続けることが困難になり、転職を考える人は少なくありません。
平成27年の厚生労働省により調査された保育士経験に関するデータによると、保育士全体のうち保育士経験2年未満に分類される方が最も多い結果となっています。これはつまり3年目以降毎年一定ペースで退職者が出るため、一番のボリュームゾーンが2年未満になっているということです。また翌年平成28年の同調査元による保育業界全体の採用・離職に関するデータでは、離職率が9.3%となっており、おおよそ10人に1人が転職をしているということが分かります(※)。
※厚生労働:保育士の現状と主な取組 p23
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf
保育士が退職を考える理由
厚生労働省の資料によると、保育士が退職する理由のランキングは以下のとおりです(※)。
1位 | 職場の人間関係 |
2位 | 給料が安い |
3位 | 仕事量が多い |
4位 | 労働時間が長い |
5位 | 妊娠・出産 |
6位 | 健康上の理由 |
7位 | 結婚 |
8位 | 他業種への興味 |
9位 | 子育て・家事 |
10位 | 転居 |
保育士だけに限りませんが、上位は職場の人間関係や収入、仕事量の多さが占めています。
保育士の業務は、子どもだけではなく上司や先輩後輩・同僚・保護者など多くの人とコミュニケーションを取りながら進める必要があります。クラスの担任になった場合は複数担任になる場合が多いでしょう。そのような場合はペアになった担任と意見や方針のすり合わせをしながら業務を進める必要があります。また、保護者からのご意見・ご要望に対し、丁寧な受け答えやきめ細やかな対応も必要になるでしょう。このように、多くの人と連携を取りながら業務を進める必要があり、人間関係に悩む要因になることもあるでしょう。
また、保育士の業務は子どもの保育だけに留まらず各種書類作成や行事の準備、備消耗品管理や清掃など多岐にわたり、休む暇なく常に仕事に追われているような保育士もいます。そのような「仕事量の多さ」に対して給料が見合っていないと不満を持つこともあるでしょう。
さらに、保育士は早番・遅番などシフト勤務になることや保育園の行事にあわせて勤務することもあり、結婚・妊娠・出産・子育てといったライフステージの変化に対応できず、退職を選ぶ保育士も少なくありません。
※厚生労働省:図表1-2-62 保育士として就業した者が退職した理由(複数回答)
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/21/backdata/01-01-02-62.html
保育士から異業種への転職は可能?
保育士が転職する場合、「やったことがないこと」「ずっと興味があったこと」を仕事にしたいと考える人もいるでしょう。保育士から異業種への転職には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
●新しい人間関係が広がる ●ライフスタイルにあわせた勤務時間が期待できる ●自宅から近い職場や在宅ができる ●職場を選択できる ●年収アップ・キャリアップが望める | ●取得した資格や今までの経験を活かせない場合がある ●初めての環境・新たな人間関係に慣れていく必要がある ●知識やスキルを学びなおす必要がある ●子どもと関わる仕事ではなくなる可能性がある |
事務や接客など、保育以外の仕事は多くあるものの、それぞれの業種に合った知識やスキルが求められます。しっかり準備すれば、保育士から異業種への転職も難しくはありません。一度きりの人生のため、興味のある仕事にチャレンジしキャリアアップするのもよいでしょう。
保育士から転職しやすい職種5選
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ここからは、取得した保育士資格や経験を活かして転職したいと考える人に向けて、保育士から転職しやすい職種5選をご紹介します。それぞれの仕事内容や魅力も解説しますので、比較検討してみましょう。
ベビーシッター
ベビーシッターは、依頼者の自宅などへ向かい保育を行う仕事です。依頼者から要望があれば、保育園や学校に迎えに行ってそのまま子どものお世話をしたり、簡単な家事代行を行ったりすることもあります。
ベビーシッター | |
勤務場所 | 依頼者の自宅など指定された場所 |
対象年齢 | 0歳~(会社によって違いあり) |
必要な資格 | なし(保育士や認定ベビーシッターなどの資格があれば有利) |
仕事内容 | 食事や排泄の介助遊びやお昼寝のサポート保育園や習い事への送迎 など |
転職の魅力 | 集団保育ではなく1~2人とゆっくり関われる大きな行事がないため業務負担が少ない保護者のニーズに合ったサービスを行える希望の時間に働けるため趣味や育児と両立できる |
保護者の代わりに保育を行うという点では、保育士の仕事内容と大きな違いはありません。しかし、ベビーシッターは1~2人程度の子どもを預かるため、保育園よりも一人ひとりとゆっくり関われます。子どもを楽しませるためには遊びの引き出しが必要ですが、そこは保育士としての経験を活かせるポイントです。
託児スタッフ
託児スタッフは、商業施設や医療機関などのキッズルームで子どもを預かる仕事です。保護者がゆっくり買い物や受診ができるように、子どもを預かって楽しい時間を提供します。イベントや商談がスムーズに進むよう、託児サービスを行うこともあります。
託児スタッフ | |
勤務場所 | 商業施設や医療機関などのキッズルーム |
対象年齢 | 0歳~(場所によって違いあり) |
必要な資格 | なし(保育士や小学校教諭などの資格があれば有利) |
仕事内容 | 託児スペースの管理子どもの遊びの見守りや安全確認手遊びや絵本の読み聞かせ など |
転職の魅力 | 多くの子どもと触れ合える大きな行事がないため業務負担が少ない複雑な人間関係や保育計画がない希望の時間のみ働けるためプライベートを大切にできる |
託児スタッフは、その時々で預かる子どもが異なります。その場限りの保育となるため、さまざまな年齢の子どもと関わる楽しさを味わえます。しかし、短時間のみの関わりになるため、子どもと信頼関係を築くのが大変です。人見知りへの対応には、今までの保育士経験を活かせるでしょう。
児童館・学童スタッフ
児童館は児童福祉施設の一つで、18歳未満の子どもへ遊びを通じた健全育成活動を行います。近所に住む乳幼児親子が遊びにきたり、放課後に子どもたちが遊びにきたり、さまざまな子どもに居場所や遊びを提供します。
児童館・学童スタッフ | |
勤務場所 | 児童館・学童施設内 |
対象年齢 | 18歳未満の子ども |
必要な資格 | 施設によって異なる |
仕事内容 | 地域の乳幼児親子に向けた遊び場の提供子育て家庭の居場所作りや相談業務放課後児童の育成や指導来館してきた子どもへの遊びの提供 など |
転職の魅力 | さまざまな年齢の子どもと関われる子どもを楽しませるための企画・運営に携われる保育園と比べて勤務時間が短い子どもたちの居場所作りに貢献できる |
児童館によっては学童クラブが併設されていて、午前中は乳幼児親子との地域活動、午後は学童クラブの子どもたちの見守りを担うこともあります。遊びを通して子どもたちの成長を支えるこの仕事は、保育士の経験を十分に活かせます。なお、児童館は令和4年時点で全国に4,301カ所のため、保育園と比べると求人が少ないようです。
放課後等デイサービススタッフ
放課後等デイサービスとは、放デイとも呼ばれる児童福祉サービスのことです。障がいを持つ子どもが放課後や長期休暇に通所し、子どもに合わせた発達支援を提供します。
放課後等デイサービススタッフ | |
勤務場所 | 各事業所内 |
対象年齢 | 6~18歳 |
必要な資格 | 児童指導員や保育士など |
仕事内容 | 子どもたちが自立した生活を送るための支援個別支援計画に沿った遊びや創作活動保護者の相談支援や関係機関との連携 など |
転職の魅力 | 障がいのある子どもの成長を見守れる保育士としての経験やスキルを伸ばせる保育園と比べて勤務時間が短い |
保育対象や施設の雰囲気も保育園とは大きく異なるため、戸惑うことも多いかもしれません。特に、保育園と違い放課後等デイサービスでは、児童発達支援管理責任者や機能訓練の担当者、看護職員などとチームで子どもの支援に当たります。難しい側面もある仕事ですが、社会貢献ができる仕事なのでやりがいを感じることもできるでしょう。
病院内保育所スタッフ
院内保育所とは、病院内で勤務する医師や看護師などの子どもを預かる保育施設のことです。医療従事者には夜勤があり、勤務が不規則です。子育てとの両立に悩み、退職を考える職員を減らすために設置されています。
病院内保育所スタッフ | |
勤務場所 | 病院内の一室または病院の近隣 |
対象年齢 | 0歳~(施設による) |
必要な資格 | 保育士 |
仕事内容 | 子どもの食事や排泄の介助季節の行事や日々の設定保育の立案・実施夜勤時は入浴や就寝の見守り など |
転職の魅力 | 保育園での預かりと仕事内容が変わらない少人数保育でゆっくり子どもと関われる大きな行事がないため業務負担が少ない夜勤などがあり収入アップが期待できる |
院内保育園で働く保育士は、医師や看護師の働きやすさをサポートする重要な役割です。仕事内容としては、預かる子どもが限定されているだけで一般的な保育園と大差ありません。そのため、保育士としての経験を十分に活かせます。福利厚生は病院の水準に合わせていることが多く、好待遇が期待できるのもうれしいポイントです。
要注意!保育士が転職するときのポイント
転職を考えたときは、まず「本当に今の保育園を辞めたいのか」「なぜ保育士を辞めたいのか」自分の気持ちをよく確認してみましょう。今働いている保育園に不満がある場合は、まずは違う保育園や別の児童福祉施設への転職を考えるのがおすすめです。
しかし、保育士としての働き方から離れたい場合は、異業種への転職を考える必要があります。そのように、方向性を決めてから転職活動を始めましょう。保育士の転職活動のポイントは、以下のとおりです。
丁寧に引き継ぎを行う
お世話になった保育園が求人手続きに困らないよう、退職の意向は早めに伝えましょう。
退職を伝えたら、少しずつ引き継ぎを行っていきます。例年大きな行事を担当していた場合は、準備の手順や道具の保管場所などを分かりやすくまとめます。
また、受け持っているクラスの子どもの書類も整理しておきましょう。退職するときには、保育園の備品と私物の整理も忘れずに行います。
履歴書・経歴書で経験をアピールする
希望する転職先が決まったら、履歴書や経歴書を作成して経験をアピールしていきます。転職時には、以下のようなポイントが懸念されます。
保育関連への転職
- 人間関係などトラブルを起こしての転職ではないか?
- 担任保育士として即戦力になる人材か?
- 新しい保育方針にも柔軟に対応できるか?
異業種への転職
- 保育士としてのスキルを新しい仕事にも活かせるか?
- 一般常識や基本的なパソコンスキルは持っているか?
- 新しい環境で一から学び直す意欲はあるか?
細かい経歴の他、新たな気持ちで学ぶ意欲があることや、どのような環境にも柔軟に対応できることのアピールが欠かせません。そして何より、前向きな気持ちで転職への希望を伝えることが大切です。
面接対策をしっかりとしておく
転職のエントリーが整ったら、面接対策をしっかり行いましょう。保育士の面接は、ピアノの実技試験があったり、実習で子どもとの関わり方を見られたりすることがあります。
しかし、異業種の面接は雰囲気がまったく異なります。どのような質問があるか、聞かれそうな内容を調べてまとめておくことが大切です。
まとめ
保育士の転職は珍しくありません。多くの保育士が、保育関連または異業種への転職を経験しています。「引き続き子どもと関われるやりがいのある仕事をしたいけど家庭との両立が難しい」「少人数の子どもとゆっくり関わりたい」という保育士には、ベビーシッターがおすすめです。
特に、初めてベビーシッターの仕事を始めるという方には、24時間本社のサポート体制が備わっているポピンズのナニーサービスがおすすめです。万が一お預かり中に怪我があった場合、病院同行は必ず本社社員が行います。その他、器物の破損等のトラブルがあった場合も、もちろん本社対応。ナニーがクレーム対応することは一切ありません。
また、ポピンズの教育ベビーシッター「ナニー」は、さまざまな社内研修で乳幼児教育や発達について学べます。一般的なベビーシッターの仕事だけではなく、教育面のサポートも行うためやりがいも絶大です。働く時間も家庭の事情に合わせて選べるため、働きやすい環境が整っています。
転職を考えるときの悩みは人それぞれですが、無理して続けることで、体調を崩すことがあっては大変です。よりよい環境で働くため、慎重に転職先を探しましょう。
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この記事を書いた人
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- 山本彩香
- 1988年生まれ|四年制大学で児童学を学び、幼稚園教諭一種免許と保育士資格を取得。卒業後は、児童館や保育園などで保育士として約10年の勤務経験があります。 妊娠・出産を期に、現在は保育系ライターとしてさまざまなメディアで執筆中。保育士と2児の子育て経験により、保育園側と保護者側の視点に立った「共感できる文章」を得意としています。