ナニーが教える、運動能力の基礎をつくるハイハイの重要性
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赤ちゃんがなかなかハイハイしないことに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ナニーとしてお伺いする時も、成長に関するご相談をよくお受けします。
「ハイハイしないけど、いつ頃からハイハイするのでしょうか?」「ハイハイしないなら無理にさせる必要はありませんか?」など質問されます。
赤ちゃんがハイハイを始める目安の時期や、ハイハイの練習法、重要性などをご紹介します。
contents
赤ちゃんがハイハイを始める時期と目安
「ハイハイ」とは、赤ちゃんが手のひらを使って上半身を起こし、膝下を床につけたまま動くことです。前段階として「ズリバイ」という動きもあります。腹ばいで移動する、ほふく前進のような動きです。
始める時期の目安は個人差がありますが、だいたい8ヶ月前後となります。ハイハイをしないと焦る必要はありません。大切なのはスタートの時期よりも、どれだけハイハイを行ったかです。なぜならハイハイは身体と脳の発達にとって非常に大切な動きだからです。
ハイハイをすることの重要性
筋肉の発達を促す
ハイハイをすることで、赤ちゃんの上半身や下半身の筋肉が発達します。ハイハイをするためには、赤ちゃんが手のひらを床につけて、腕の力を使って上半身を支える必要があります。この動きをするために、赤ちゃんの脊柱起立筋が鍛えられるでしょう。脊柱起立筋は背中側にある、上半身を起こすときに使われる筋肉です。足を使って動くため下半身の筋肉も発達します。
やがて不安定ながら物につかまって立てれば、つかまり立ちが出来るようになります。
運動能力を育てる
ハイハイは全身を使った運動です。
首や肩の筋肉、背筋、腹筋、手指の筋肉も使います。ハイハイをすることで、赤ちゃんの体幹の中でも特に背筋が鍛えられます。背筋はバランスをとるのに非常に重要な筋肉ですので、この時期に鍛えておくと、立ち上がった時にバランスをとりやすくなります。また、目と手、手と足など、2つ以上の部位を同時に使う動作をハイハイをすることで上手く出来るようになります。この動作は協応動作と呼ばれていますが、協応動作が上手く出来るようになると転倒しそうな時に危険を察知して手を伸ばすなど危険回避能力も鍛えられていきます。
つまりハイハイは、成長してから良い姿勢を維持したりバランス感覚に優れた運動神経の良い子を育てるのに大切な基礎能力となります。
股関節の発達にも効果的
大人の股関節は、丸い大腿骨頭を、骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)が包んで支える形です。赤ちゃんの頃にハイハイをすることで、この寛骨臼の形成が促されます。赤ちゃんの頃にあまりハイハイしていなかった場合、股関節の受けとなる部分が浅いまま成長し、あとになって股関節が痛む原因になることもあるのです。
脳の発達を促す
身体を動かす時に、もっとも重要な働きをしているのは脳です。脳、神経、筋肉、骨の見事な連携によって、私たちの身体は高度に動きます。身体能力と運動能力を高めるためには、脳、神経、筋肉、骨を全て適切に育てる必要があります。そして脳が凄まじい勢いで成長するのは0〜3歳期です。筋肉と骨の支持力、支持運動に必要な複雑な信号を発信する為の脳回路など、ハイハイの動きは支持運動に必要なすべての脳回路、神経、骨を育てる事に役立つのです。
ハイハイをしないことで「支持力」が発達しない現代
昔に比べて現代の子ども達は運動能力が低下しており、その中でも支持力はもっとも弱まりつつある能力です。ハイハイをすることで自らの腕を支える力が培われ、バランスを崩して倒れそうな時、あるいは何かにぶつかりそうな時など、私たちが身体的な安全を守る時に大変重要になります。バランス能力が適切に働くと頭や体を守るためにとっさに手が出て体を支えることが出来ます。
かつての日本の生活は支持力を育てるのに非常に適していました。畳の生活では、立ち上がる時、自然に手をついて体を支えます。子ども達は床でじゃれあい、兄弟で取っ組み合いの遊びをし、親が特別な身体教育など考えなくても支持能力が育まれていました。
しかし、現在のようにフローリングの洋室中心の家が一般的となった環境では、かつて自然に身についていた力を育てることは難しいでしょう。だから今、子どもの身体能力が適切に伸びるための支援が必要なのです。
赤ちゃんとハイハイの練習をする方法
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ハイハイをすることで、さまざまな発達を促せます。どうやったらハイハイが出来るようになるのでしょう。
ここからはハイハイの練習方法をご紹介します。
広くて安全な場所を確保する
ハイハイする前の赤ちゃんは、あまり動かないので、赤ちゃんの周囲だけを気にかけていればよかったでしょう。しかし、赤ちゃんがハイハイするようになると、動ける範囲が広がっていきます。ハイハイをしても問題がないよう、練習する時は広いスペースを確保しましょう。また、赤ちゃんが危険なものを拾って触ったり、口に入れたりしないように危険なものを置かないようにすることも大切です。テーブルの角にも気をつけましょう。
おもちゃを視界に入れて興味を引く
赤ちゃんを腹ばいにして(呼吸が苦しくないか常に見守りましょう)よく見える位置に、おもちゃを置きましょう。音の出るおもちゃだと更に興味が湧きます。こうすることで赤ちゃんは、おもちゃに触りたくて自分で何とか動こうとするため、ハイハイの練習になります。この時期の赤ちゃんは手にしたものを口に入れて確認する時期のため、お口に入らないサイズ(直径4cm以上)の安全性の高いおもちゃを選びましょう。
大人が手本を見せる
赤ちゃんは周囲にいる人の真似をしたがります。赤ちゃんにハイハイの練習をさせるために、周囲の大人がハイハイして見せてあげましょう。その時、楽しそうにするのがポイントです。そうすることによって赤ちゃんは大人の真似をしたくなるのです。
赤ちゃんの身体の動きをサポートする
ハイハイは赤ちゃんにとって未知の動きです。赤ちゃんが動けない時は、少しだけサポートしてあげましょう。
例えば、赤ちゃんの足の裏を支えて、そのまま前へ進めるように少し押してあげてください。そうすると前へ進む感覚を体感出来るでしょう。
ただし、赤ちゃんの動きをサポートする時に焦りは禁物です。なかには、ゆっくり発達していく赤ちゃんもいます。急かさずに見守りましょう。
ハイハイをしなくても心配しないで
ハイハイが出来なくても心配する必要はありません。時期には個人差もありますし、ハイハイしないでつたい歩きを始める子どもも珍しくないからです。生後9〜10ヶ月に行われる乳幼児検診で見ているのはハイハイの出来る出来ないではありません。おすわりやハイハイが出来ることによって脳や筋肉などの体の機能をコントロール出来ているかを見ています。姿勢やプロポーション、首の向き、手指の様子など、月齢に対して健全に発達しているかを見ているので、検診で「大丈夫」と言われれば安心して良いのです。
ハイハイは赤ちゃんの成長の一つの節目でとありますが、ずり這いからつかまり立ちに進む子どももいるので、必ずしもハイハイをしなくても心配はいりません。
大事なのは、ママやパパが赤ちゃんとコミュニケーションをしながら、一緒にたくさん遊ぶことです。大人の働きかけがあって、身体も心も健全に発達していきます。
まとめ
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お子様の成長過程の一つのハイハイにこんなはたらきがあるとは驚きですね。脳の発達に運動神経や身体能力が及ぼす影響は大きいと、近年の脳科学分野ではよくいわれています。人間の脳が大きく発達したのは、より複雑に身体を動かせるようになるためだった、という学説も見られます。
0歳児はもの凄いスピードで成長していきます。その一つ一つの動作には意味と繋がりがあるのです。しかし、だからといって、成長過程の短い時期に親が力を入れ過ぎても良くありません。大切なのは親は焦らず、子どもに合わせたスピードで親子で楽しみながらハイハイが出来るように進めることです。
お子様の成長には個人差があります。私も今まで多くのお子様を見てまいりましたが、一人ひとり違います。赤ちゃんの成長を見守り、サポートすることに喜びを感じながら、楽しい育児の時間を過ごしましょう。
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この記事を書いた人
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- ハタノケイコ
- 大学にて幼児教育を学び幼稚園教諭ニ種取得。 卒業後は大手百貨店に就職し接客について学ぶ。 児童館での読み聞かせボランティアをきっかけに再び保育の仕事へ。 40代でポピンズに入社し様々な保育現場で仕事をしながら保育士資格取得。 10年の経験と自身の子育てから感じた事を記事に書いて発信中。