ナニーと学ぶ!子どもの未来を育むSTEAM教育
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保育や子育てに関する情報が溢れる今、ナニーと一緒に基本的な知識や新しい情報を学んでいくシリーズ。今回は「STEAM教育」を探ってみました。
STEAM教育という言葉をインターネットで検索してみると、STEAM教育を取り入れた教育活動や教材の情報が溢れていることが分かります。この記事では、STEAM教育の概要や推奨される理由、そして保育者として日々の活動にどのように取り入れられるかをご紹介します。子どもの成長を支える新しい視点として、是非参考にしてみてください。
STEAM教育って何だろう?
STEAMの言葉の意味
STEAM教育は、次の5つの分野を組み合わせた学びです。
- S: Science (科学)
- T: Technology (技術)
- E: Engineering (工学)
- A: Liberal Arts (リベラルアーツ)*
- M: Mathematics (数学)
文部科学省では、「A」を芸術や文化、生活、経済、法律、政治、倫理などを含む堅固な概念として定義しています。理系とされるSTEM分野に「A」が加わることで、知識の習得だけでなく、それらをどう社会に生かすのか子どもたちの柔軟な発想力や創造力を育む学びとなります。
これらの5つの分野を横断的に学ぶことで、子どもたちは柔軟な発想力や問題解決力を身に付けていきます。技術が進化し、社会の課題が増える中で、STEAM教育は未来を生き抜く力として注目されています。
*Liberal Arts(リベラル・アーツ)とは…専門職業教育としての技術の判断とは異なり、思考力やための力の一般的な知識の提供や知的能力を発展させることを目標とする教育を(文部科学省HP用語解説より)
STEAM教育の始まり
STEAM教育の概念は2006年、アメリカの教育者ジョーゼット・ヤックマンさんが初めて主張しました。それ以前は「STEM教育」という科学、技術、工学、数学を横断的に学ぶ教育が重要視されていました。そこに加えられたのが「A」ーリベラルアーツです。自由な発想や感性を大切にすることで、私たちの創造力をもっと引き出したのです。
時代とともにSTEAM教育の重要性は増し、世界が注目するきっかけとなったのは2013年のことでした。 当時のアメリカ大統領バラク・オバマ氏のアメリカ国民に向けたスピーチです。
Don’t just buy a new video game, make one!(ゲームを買うのではなく、自分で作れるようになろう)
STEAM教育は、「自分で考え、手を動かし、未来を作る力」を育むための学び方。与えられたものを楽しむだけではなく、自分で作る楽しさや可能性に気づいて欲しい。そんなメッセージではないでしょうか。
日本におけるSTEAM教育の取り組み
日本では、教育や人材育成が国の最重要課題の一つとして挙げられています。各省と官民学が一体となって未来を見据えた教育改革を進める共通のゴールとして、「Society 5.0」というコンセプトが掲げられています。
Society 5.0とは、サイバー空間と現実世界を融合させ、経済発展と社会課題の解決を同時に実現する「人間中心の社会」です。AIやIoTなど、急速に進化する技術を活用しながら、これまでにない新しい価値を生み出すことが求められています。
これからの社会では、人それぞれの特性や興味が新しい価値創造やイノベーションの源泉となります。そして「well-being」(一人一人の多様な幸せ)を実現するためには、創造性に溢れた社会への学びの転換が必要です。
このような背景から政策として推進されているのがSTEAM教育です。
幼児期に育む好奇心や探求心がカギ
現在、小学校中学校では、教科を横断的に学ぶ取り組みや、課題解決型の主体的な学びが進められています。このような学びを通じて、子どもたちは「自分で考え、答えを見つける力」を育み、将来的に優れた人材の育成が期待されています。
一方で、これらの学びをさらに深めるためには、その「土台」となる幼児期の育ちが欠かせません。幼児期に芽生える「なぜ?」「どうして?」といった好奇心や探究心は、やがて探求心や創造力へとつながっていきます。
STEAM教育は、こうした好奇心を自然に育む教育です。科学や技術、アートなど多様な分野に触れながら、「知りたい!」「やってみたい!」という気持ちを楽しむことが、未来の学びの第一歩となるでしょう。
STEAMライブラリーを覧てみよう
「STEAM教育って具体的にどういうもの?」と思った方も多いのではないでしょうか。
経済産業省の「未来の教室」プロジェクトでは、STEAMライブラリー というデジタル教材集が提供されています。小中高の探求型学習に活用でき、企業や研究機関、大学が連携して開発した教材が動画や資料としてまとめられています。
学校の先生方はもちろん、誰でも視聴でき、子どもたちが「楽しい!」と感じる題材がたくさん揃っています。
今回は、その中から「うらしま太郎をシアワセにしてあげよう」 と 「Jリーグから学ぶスーパープレーに隠された科学」 という2つの教材をご紹介します。
題材1:うらしま太郎をシアワセにしてあげよう
昔話『うらしま太郎』は、子どもから大人まで誰もが知っている物語です。 海のカメに連れて行かれた太郎は、龍宮城での時間を過ごし、地上に戻るとすでに300年が経過ーーちょっと不思議すぎませんか?
この授業では、そんな「謎だらけの物語」に子どもたち自身がツッコミを入れながら、「なんでだろう?」を解き明かしていきます。
- 「海底の竜宮城で息ができるなんて、本当?」
- 「地上と竜宮城で時間の流れが違うの?」
- 「玉手箱の煙って、何かの化学反応じゃない?」
疑問が出たら次は調査! 子どもたちは、科学や自然の知識をヒントに、物語の「不思議」に挑戦していきます。
- 「人間の呼吸ってどうなっているの?」と人の体の仕組みを調べたり
- 「海の中ってどうなっているんだろう?」と専門家にインタビューしてみたり
- 海の現状がわかる動画を見て環境問題にも触れてみたり
そして最後は 「科学的に正しいうらしま太郎の物語」を作り、「太郎が快適に暮らせる竜宮城改造計画」発表!笑い声が飛び交うような学習の時間になることでしょう。
題材2:【Jリーグから学ぶ】スーパープレーに隠された科学
次にご紹介するのは、「Jリーグから学ぶスーパープレーに隠された科学」です。 サッカーのスーパープレイ、見ているだけでもワクワクしますよね。裏にはたくさんの科学や物理法則が隠されているんです!
この教材では、サッカーの基本動作である「蹴る」「止める」「かわす」「戦術」について科学的な視点で調べます。
- 「蹴る」:どうすればボールを強く・遠くに蹴れるの?ボールを曲げるためにどんな力が必要なの?
- 「止める」:Jリーガーの華麗なトラップはなぜピタッと止まるの?
- 「かわす」:ドリブルで相手をかわす一瞬にどんな動きの秘密が隠れているの?
- 「戦術」:試合の中で、選手たちはどんな作戦を考えているの?
子どもたちは、プロ選手のプレーを分解して分析するだけでなく、実際に体を動かして「どうすればできる?」を試します。こうした学びを通じて、スポーツと科学が結びついていることを体感し、「知る楽しさ」と「動く楽しさ」を同時に味わうことができます。
大人もワクワク・ドキドキ!STEAMを取り入れよう
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子どもの好奇心や探索心を育てるためには、保護者や保育者が先生になるのではなく、一緒に好奇心を持ち、一緒に体験を楽しむことが重要です。例えば、「なんで?」という子どもの質問に「それはね…」と教えるのではなく、「一緒に考えよう!」と言ってみてはいかがでしょうか?
大人も子どもも一緒に疑問を共有し、発見の過程を楽しむことで、STEAMは日常生活の中で自然に取り入れられるものになります。この章では、いくつかの簡単に始められるアイディアをご紹介します。
図書館を活用しよう
図書館は、子どもたちが探究心を広げるためのヒントの宝庫です。最近では、スマホやパソコンを使って近くの図書館にある本を簡単に検索できるシステムが整っています。
例えば、科学に関する図鑑や物語、アートブックなどを子どもと一緒に選んでみるのはいかがでしょうか。「この本面白そう!」「こんなことが書いてあるんだ!」という発見が、子どもたちの「もっと知りたい」という気持ちを引き出してくれます。
また、保護者自身も本を手に取り、子どもと一緒に読むことで、知識を共有しながら会話のきっかけを作ることができます。
絵本の続きを考えよう
読み聞かせの時間を、ただのお話の時間で終わらせるのではなく、子どもたち自身が物語に参加できる場にしてみましょう。
例えば、絵本を最後まで読まずに「このあと、どうなると思う?」と問いかけてみると、子どもたちは自分の想像力を使って物語の続きを考え始めます。「こうなるんじゃないかな!」「こんなふうにすると思う!」といった意見が飛び交い、物語の世界がどんどん広がっていきます。
さらに、「じゃあ、それを絵に描いてみようか」や「みんなで続きのお話を考えてみよう」と誘導することで、子どもたちの創造性がさらに膨らみます。自分のアイデアを形にし、それが周りに受け入れられる経験は、子どもたちにとって大きな自信となるでしょう。
なりきりグッズを用意しよう
子どもたちの創造力を刺激する方法として、簡単な「なりきりグッズ」を用意してみてはいかがでしょうか?
例えば、白衣を用意すれば「博士」になりきって科学実験ごっこができますし、エプロンを着ければ「料理人」や「お買い物ごっこ」のシナリオが生まれます。動物や鬼のお面を使えば、物語の中のキャラクターになりきる遊びも楽しめます。
グッズを使うことで、子どもたちは普段の生活では体験できないような世界に入り込み、自分なりのストーリーを作り始めます。「博士は何を発見するのかな?」「今日はどんな料理を作ろうかな?」といった問いかけをすると、子どもたちのアイデアがどんどん広がっていきます。
「なぜ?」に対して一緒に考える
子どもたちは日々の生活の中で、さまざまな「なぜ?」を抱えています。「なぜ空は青いの?」「なぜ氷は溶けるの?」などは、ふとした疑問が彼らの探究心をくすぐる瞬間です。
このような問いに対して、「それはこうだよ」と答えを与えるのではなく、「一緒に考えてみよう!」と声をかけてみましょう。インターネットや図鑑を使って調べたり、実験をしたりする過程で、子どもたちは自分で答えを見つける喜びを感じられます。
例えば、「なぜ氷は溶けるの?」という問いに対しては、氷を日なたに置いて観察したり、お湯に入れてみるなどの実験を一緒に行うと、子どもたちは自らの目で変化を確認できます。
こうしたプロセスを通じて、ただ知識を得るだけでなく、物事を深く考える力や問題解決能力を自然に育むことができます。また、「一緒に考える」姿勢は、子どもたちに安心感を与え、大人との信頼関係をさらに強めるきっかけにもなるでしょう。
子どもとの対話をもっと楽しもう
子どもたちに「正しいことを教える」場面は日常生活の中で多くありますが、その教え方を少し変えるだけで、対話がもっと楽しくなるかもしれません。
例えば、おままごとで子どもがフォークを別のものに見立てて遊んでいる場面。そこで「それは違うよ」と訂正する代わりに、「それは何に見えるの?」と問いかけると、子どもの発想に気づけるかもしれません。それは剣や魔法の杖、新しい何かかもしれません。
こうしたやりとりを通じて、子どもは「自分の考えを受け入れてもらえた」と感じ、新しい学びへの意欲が湧くでしょう。安全のための指導とバランスを取りながらも、大人が子どもの視点に寄り添うことで、保育や家庭がより豊かな場になるのではないでしょうか?
まとめ
今回はSTEAM教育について、基本的な概念から日本における取り組み、そして日々の活動に取り入れるための具体的なアイディアまでご紹介しました。STEAM教育が少しでも身近で、そしてワクワクするものに感じていただけたなら幸いです。
ナニーとして日々活動していると、子どもたちの明るい未来を願う保護者や保育者の方々にたくさん出会います。そのような願いを叶える手段の一つとして、STEAM教育を取り入れてみるのはいかがでしょうか?
特別な道具や環境がなくても、日常生活の中で「なぜ?」に寄り添い、共に考えたり楽しんだりすることで、子どもたちの好奇心や探究心を育むことができます。
これからも、ナニーと一緒に学びを深めていきましょう!
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この記事を書いた人
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- 遠藤智菜美
- 2016年3年横浜国立大学経済学部卒業後、8年間営業として一般企業に勤務しました。「保育に携わりたい」という兼ねてからの想いを叶えるため、現在は保育士試験の勉強をしながらベビーシッターとして勤務をしています。地元山形県で活躍する人のインタビュー記事を作成するなど、webライターとしても活動しています。