保育士の給与はどのくらい?年齢別・役職別に一覧表で紹介
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保育士としての働き方やキャリアパスを考えたとき、給与面について気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、「自分の給与は低いのでは?」「昇給するためにはどんなことが必要なのだろう?」と考えている現役保育士や、収入面が気になりながら将来的に保育士を志している方に向けて、保育士の給与について詳しく解説します。
保育士の給料や年収はどのくらい?
ここでは、保育士の給料や年収のデータを詳しく紹介していきます。具体的な数字を把握することで、ご自身の収入について見通しを持つことができ、今後のキャリアについてもより具体的に検討ができるでしょう。
保育士の平均給料・平均年収
まずは、保育士全体の平均給与と平均年収を、厚生労働省の調査データから確認します(※)。
保育士の平均給与(月収) | 保育士の平均年収 |
26万6,800円 | 391万3,700円 |
※平均年収は、年間賞与等を含めた概算額。
表に示されている平均給与は、額面(税金や社会保険料を差し引く前の額)です。この金額から税金や社会保険料が引かれて、通常約75%から85%が手取りとして残ります。つまり保育士の場合、平均手取り月収はおおよそ20万円前後になります。
(※)e-Stat 政府統計の総合窓口:令和4年賃金構造基本統計調査
保育士の給与は他の職種より低い?
国税庁の令和4年分のデータによれば、給与所得者全体の平均年収は458万円です(※1)。一方、保育士の年収平均は約391万円で、給与所得者全体平均よりも低い水準となっています。
以下は、厚生労働省のデータを基に他の職種と平均の給与を比較した表です(※2)。
こちらからもやはり保育士の給与や年収は低い傾向にあることが読み取れます。
職種 | 平均給与(月収) | 平均年収 |
保育士 | 26万6,800円 | 391万3,700円 |
幼稚園教員・保育教諭 | 26万7,400円 | 399万4,700円 |
介護支援専門員(ケアマネージャー) | 28万4,500円 | 405万7,900円 |
一般事務従事者 | 29万9,700円 | 437万4,300円 |
看護師 | 35万1,600円 | 508万1,300円 |
秘書 | 35万600円 | 520万400円 |
※平均年収は、年間賞与等を含めた概算額。
※2 e-Stat 政府統計の総合窓口:令和4年賃金構造基本統計調査
【年齢・役職・エリア別】保育士の給料一覧表
保育士の給与が、年齢や役職、また勤務するエリアによってどう変わるのか確認してみましょう。
年齢別に見た保育士の給料
次の表は、厚生労働省の調査データに基づいて、保育士の給与を年齢別に示した一覧表です(※)。
【年齢別】保育士の給与
年齢 | 平均給与(月収) | 平均年収 |
20~24歳 | 23万円 | 323万4,100円 |
25~29歳 | 24万8,200円 | 366万3,000円 |
30~34歳 | 25万8,800円 | 377万2,000円 |
35~39歳 | 27万800円 | 401万3,800円 |
40~44歳 | 29万8,400円 | 443万5,700円 |
45~49歳 | 28万1,000円 | 425万8,400円 |
50~54歳 | 28万7,900円 | 425万5,500円 |
55~59歳 | 28万9,300円 | 418万1,100円 |
60~64歳 | 26万9,400円 | 390万2,900円 |
65~69歳 | 27万3,400円 | 394万800円 |
70歳~ | 34万2,900円 | 504万7,400円 |
※平均年収は、年間賞与等を含めた概算額
20歳以降、40~44歳の区分まで給与が上昇しており、全体を見ると40代・50代の給与が高くなっているのがわかります。40代・50代は、経験を積んで主任などの役職についている保育士が多い年代です。
また、70歳以降の給与が高いのは、施設長や園長など管理職についているためと推測できます。
※e-Stat 政府統計の総合窓口:令和4年賃金構造基本統計調査
役職別に見た保育士の給料
役職別の給与を一覧表で見ていきましょう。内閣府が私立と公立に分けて実施した調査では、役職が上がればそれに応じて給与も上がると具体的な数字で示されています(※)。
【役職別】保育士の給与(保育所勤務・賞与込みの月収)
役職 | 私立・常勤 | 公立・常勤 |
施設長 | 56万5,895円 | 63万2,982円 |
主任保育士 | 42万2,966円 | 56万1,725円 |
保育士 | 30万1,823円 | 30万3,113円 |
役職を目指すのは、将来的に収入を増やすための一つの道です。主任保育士や施設長の役職につくまでには時間がかかるものの、明確な収入アップが見込めます。
※内閣府 教育・保育に関する報告・データベース:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】p7
エリア別に見た保育士の給料
厚生労働省のデータから、勤務するエリア別で保育士の給料の違いを確認していきます(※)。
【月収30万円台】
東京都、神奈川県
【月収29万円台】
大阪府、京都府
【月収26万円台】
青森県、石川県、埼玉県、茨城県、千葉県、鹿児島県
【月収25万円台】
北海道、富山県、福井県、栃木県、群馬県、岐阜県、静岡県、愛知県、奈良県、鳥取県、岡山県、香川県、山口県
【月収24万円台】
岩手県、山梨県、兵庫県、愛媛県、高知県、福岡県、熊本県、宮崎県
【月収23万円台】
秋田県、宮城県、福島県、三重県、滋賀県、和歌山県、徳島県、佐賀県
【月収22万円台】
新潟県、島根県、広島県、大分県、長崎県、沖縄県
【月収21万円台】
長野県
【月収20万円台】
山形県
全体的に、人口の多い都市部や子育て世帯の多い地域、つまり保育園に預けられる子どもが多く保育の需要の高い地域では、特に多くの保育士を確保する必要があるため、給与は高くなる傾向です。
ただし、給与は各園の方針の影響も大きいため、都道府県という要素だけで決まるわけではありません。
エリアの特徴と各園の方針を総合的に把握しておくと、ご自身の給与水準について判断する材料になるでしょう。
※e-Stat 政府統計の総合窓口:令和4年賃金構造基本統計調査
今後は上がる?保育士の給与の推移
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保育士の低賃金が問題となり、国は保育士の待遇改善に注力するため、2013年(平成25年)に処遇改善等加算制度を導入しました。
処遇改善等加算制度は加算額を確実に人件費(賃金改善)に充てることが条件とされており、内閣府子ども・子育て本部がまとめた資料によると、2013年(平成25年)から2019年まで(令和元年)まで持続的に増加しています(※)。
では、給与の推移を詳しく見ていきましょう。
※厚生労働省(内閣府子ども・子育て本部):図表1-2-67 保育士等の処遇改善の推移 2013年度~2021年度(平成25年度~令和3年度)
保育士の給料の推移
次の表は、厚生労働省の資料を基に、保育士の給与の推移をまとめたものです(※1)。
【保育士の年収の推移】
年 | 保育士の年収 |
2013 (平成25) | 310万円 |
2014 (平成26) | 317万円 |
2015 (平成27) | 323万円 |
2016 (平成28) | 327万円 |
2017 (平成29) | 342万円 |
2018 (平成30) | 358万円 |
2019 (令和1) | 364万円 |
このように、2014年(平成26年)から年々給与が上がっていることがわかります厚生労働省は引き続き保育士の給与の改善に取り組んでいるので、少なくとも今後もこの給料水準が維持されると予測されます(※2)。
※1 厚生労働省:保育の現場・職業の魅力向上検討会(第6回)令和2年 参考資料1保育士の現状と主な取組 p38
※2 厚生労働省 ハローミライの保育士:保育士の働く環境は?
保育士が給料を上げる方法
では、実際に保育士の給与アップにつながる方法を6つ紹介します。
キャリアップ研修を受ける
都道府県主導で実施されているキャリアップ研修を受講することで、技能の習得も出来、処遇も改善されます。経験年数が3年以上なら職務分野別リーダーとなって月額5,000円、経験年数が7年以上なら副主任保育士または専門リーダーとなって月額4万円の給料アップが可能です(※)。
月額4万円の給料アップは大きいので、経験年数を満たしているのであれば積極的にキャリアップ研修を受講しましょう。ただし、各園によって研修を受けられる保育士の人数などの条件が異なるので、注意が必要です。まずは勤務先の主任や園長に詳細を確認してみるとよいでしょう。
※厚生労働省:図表3-2-5 保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ(平成29年版厚生労働白書 -社会保障と経済成長)
役職につく
保育士の役職には、園長や主任などがありますが、それらにつくと給与が上がります。ただし、認可保育園や公立保育園で役職につくには20年以上の保育歴を求められる場合が多く、そこまでの年数に達するのはなかなか難しいと感じる方もいるでしょう。
一方、小規模保育所や企業主導型の園などでは、実務経験があれば30代でも役職に就けるチャンスがある園もあります。そういった場合であれば保育士としてのキャリアアップや管理職の経験を積むこともでき、収入アップにもつながります。
公務員保育士として働く
地方公務員採用試験を受けて、公立保育園やその他の保育施設で働く公務員になるのも給料を上げる方法の一つです。公務員になると雇用が安定し、昇給や賞与が期待できるので、年収が高くなる可能性があります。
ただし、注意点として、公務員の場合、転勤があること・今後公立保育園が民営化されて職場が変わるリスクがあることなどを覚えておきましょう。
また、地方公務員採用試験には、年齢制限などの応募条件が設けられていることが多いので、事前に確認することが大切です。(※1)(※2)
公務員保育士になりたい場合は、自治体の試験情報をしっかり確認し、応募できる年齢のうちに採用試験にチャレンジしましょう。保育士の公務員試験は競争率の激しい狭き門となっているので、1回の挑戦で合格できない場合も想定して早めの準備が重要です。
※2 大阪市:令和5年度大阪市職員(保育士A・保育士B[追加募集])採用試験要綱
好条件の園に転職する
公務員として働く場合は別として、保育士として働くときの給料は勤務先の園によって異なり、基本給だけでなく、各手当や賞与も含めて園ごとに水準が定められています。
従って、条件のよい園に転職して給料を上げるのも現実的な選択肢の一つです。転職に際しては、給料面のみならず勤務体制・職場環境などがご自身の思い描いている条件にどれだけ近しいかなども総合的に検討することをおすすめします。
保育士資格を生かして別の職種に転職する又は副業をする
保育士として働く場所は、保育園だけに限りません。保育士資格を生かしながら、収入アップを目指す方法もあります。
例えば、障がいのある子どもを支援する分野に転職すると、実務経験を積んで児童発達支援管理者という資格の取得が可能です。児童発達支援管理者の給与は、一般的な保育士よりも高い傾向があります。
また、ダブルワークOKの職場であれば、ベビーシッターなどを始める等、収入源を複数もつことで収入を増やすことができるかもしれません。
保育士としてのキャリアを考えるときには、保育園以外の職種やダブルワークも視野に入れるとよいでしょう。実際に転職するかどうかは別としてもご自身のライフプランなどとも照らし合わせながらの可能性を広く見つめ直すことが出来ます
資格を取得する
すぐに給与アップにつながるとは限りませんが、資格を取得することも有効な方法の一つです。
保育関連の資格を取得するメリットは、保育士としてのスキルや専門性を高められることです。と同時に、将来的に給与の高い職場に転職するチャンスを増やすことにもなります。
例えば、英検やTOEICなどの英語系資格は、ネイティブの講師とともに保育をするインターナショナル保育園への転職に有利です。また、費用や時間がかかりますが、例えばモンテッソーリ教育教師の資格を取得すればモンテッソーリ園への転職につながる可能性が高いでしょう。
まずはご自身の興味のある分野から学び始め、スキルや専門性を高めていき、、より納得できる条件の就職先を見つけることができるといいですね。。
まとめ
処遇改善費の加算などで上昇傾向にあるものの、保育士の給料は他の職種と比べて低い傾向にあります。保育士は子どもの生活を支えるやりがいのある仕事ですが、同時に子どもの命を預かる責任の重い仕事でもあります。だからこそ、ご自身が納得できる職場、働き方を選択できると良いでしょう。給与も含めて、自身のキャリアを広い視野で考えていくことが大切です。
保育士が勤務できるのは、一般的な保育園だけではありません。例えばキャリア選択肢の一つとして「ナニー」があります。ナニーは保育士としての専門性を生かしながら、一人ひとりの子どもにじっくり向き合える教育ベビーシッターです。また、ご自身に合った働き方を選びやすく、プライベートとの両立がしやすいのもナニーとして働くメリットといえます。
保育士・ベビーシッターは、子どもが好きで、子どもと関わりたいという気持ちがある人にとって魅力的な仕事です。その気持ちを忘れずに、よりご自身に合ったキャリアを見つけて、納得のいく働き方をしていきましょう。
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この記事を書いた人
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- 柳生有香子
- 保育士資格、幼稚園教諭2種免許保有。3児を出産後、30代で保育士資格を取得し、認可保育園と企業主導型保育園で合わせて10年間勤務しました。集団の中で困りごとを抱える子どもやその保護者と関わりたいという思いから、現在は児童発達支援・放課後等デイサービスで個別療育に従事しています。