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“心のこもったインフラ”であるために — ナニーをしながらの闘病生活で得たかけがえのないもの—ナニーだから出会えた特別なストーリー『Nanny Thank you book』掲載エピソードより

2026.08.28
心のこもったインフラ”であるために — ナニーをしながらの闘病生活で得たかけがえのないもの

ポピンズ39周年を記念し、ナニーさんへの感謝を込めて制作された冊子『Nanny Thank you Book』。制作にあたり、お世話を通じての「忘れられないエピソード」を多くのナニーさんからお寄せ頂きました。

『Nanny thank you book』について詳しくはこちらをご覧ください→


その中で、スーパーナニーとしてご活躍のKさんは、ナニーとして働きながらがんの闘病生活をされた経験をお送りくださいました。治療を乗り越える日々を支えたのは、定例でお世話をしていたお子さまやご家族からの温かな言葉と、変わらぬ信頼でした。いつもは誰かを支える側のナニーが、支えられることで改めて気づいた人とのつながりの尊さ。現在も「ご家庭にとって絶対に揺るがない、心のこもったインフラでありたい」と語るKさんに、13年目を迎えるナニーという仕事への思いと、これまでの歩みを伺いました。

“お支えしながら、支えられる”。お客様の存在が、苦しい時期を乗り越える力に

―アンケートにお寄せいただいた、ナニーの仕事をしながら闘病されたお話がとても印象的でした

私はナニーになって3年目にがんを患いました。闘病は心身ともに苦しい経験ではあったのですが、普段はお客様を支える側である私自身がお子さまやご家族様に支えられ、生かされていることを実感する期間でもありました。手術のため一時休職しましたが、定例で入っていたお客様から頂いたお守りや、励ましのお言葉が回復への大きな力になりました。また、同じ時期に家族も病気を患い、大変厳しい状況の中、闘病中の身でありながら「私が家族を支える」と強い気持ちでいられたのも、ナニーという仕事と、お客様の存在のおかげに他なりません。いわば我が家は“沈没しそうな船”状態でしたが、その舵を切る勇気を頂きました。

現在、ナニーとしてご家庭をお支えするために、私自身が「絶対に揺らがないインフラ」であることを信条としていますが、この時期の経験が私を一段と強くしてくれたように思います。

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―特に心の支えになったというお子様とのお話を詳しく教えて頂けますか?

新人の頃から継続的にお世話させて頂いていた当時2歳のお子さまと、年中のお嬢さまの存在は大きかったです。術後、抗がん剤を3~4週間ごとに投与する治療を6回受けました。合間の体調が安定している時期に、自宅から近かった2歳のお子さまのお世話を再開することにしました。私の体調が万全ではないと承知のうえで、「Kさんにお願いしたい」と大切な娘さんをお任せ下さったご家族には心から感謝しています。

保育園にお迎えに行くと「Kさん!」と笑顔で駆け寄ってきて下さる姿に、時に沈みそうになる心がどれだけ救われたかわかりません。ウィッグがずれてしまった時に「大丈夫?」と小さな手で直してくださった時には、その優しさに思わず涙がこぼれました。体力の低下や術後の痛みはあったものの、仕事の時はナニーとして背筋をピンと伸ばして2歳のお子さまを全力でお守りする中で、「あ、また戻れるかもしれない」と少しずつ自信を取り戻していきました。

また、年中のお嬢さまのお母さまからは「私たちはずっとKさんを待っています。Kさんは娘のもう一人のお母さんです」とのショートメッセージを頂きました。添えられていたのは、成長されたお嬢さまの可愛いお姿。胸がいっぱいになるとともに、これまで築かせて頂いた絆や信頼関係を改めて感じました。抗がん剤治療も終盤だったため、「また一歩踏み出してみよう」と考え、ポピンズのオフィスに電話して、またお嬢さまのお世話をさせて頂けるかうかがいました。お世話再開が叶い、10カ月ぶりにお姿を目にした時にはポロポロと涙が出てしまいました。

現在も当時2歳のお子さまと年中のお嬢さまのお世話が続いています。おそばで成長を見守らせて頂ける喜びと有難さを感じる日々です。誰かのために心を尽くし、一生懸命になれること。そしてその思いに気付いて感謝して頂けること。ナニーという仕事は私にとって生きる力であり、人とのつながりの尊さを感じさせてくれるかけがえのない存在です。

↑ Kさんが長年大切にしている、二人のお子さまからの手づくりの贈り物

大切にして来た“誠実な生き方”が、ナニーという天職につながった

―現在はスーパーナニーとしてご活躍ですが、ナニーになる以前の人生を教えてください。

幼少期は、人の気持ちに敏感な子どもでした。いじめられている子を見ると自分まで苦しくなり、「助けてあげたい」と思うような子どもでした。また、粘り強くコツコツ努力する性格でもあったと思います。成長するにつれて要領よく生きる術も身につけましたが、どこか自分らしくないという違和感がありました。新卒で入社した企業では新入社員研修や販売サポートチームの一員として働きましたが、そうした葛藤を常に抱えていたように思います。

出産を経験したことで、親として生きるうえで改めて「誠実さを大切にしたい」と思うようになりました。一方で、子育てでは「この子を何とかしなければ」という思いが強く、知性を身につけさせたい、社会に出たときに自立できるようにしたいと、ずっと肩に力が入ってたように思います。「子どもの人間関係も大切にしなくちゃ!」と毎日のように頑張って公園に通う中で、お受験に熱心なママたちのコミュニティに入り、幼稚園受験、小学校受験も経験しました。今振り返ると、我が家にとっては必ずしも“正しい道”ではなかったかしらとも思いますが、ポピンズで受験がスタンダードともいえるプレミアム会員さまをお手伝いするうえでは、その経験が大いに役立っています。

―ナニーになったことでご自身や人生に変化はありましたか?

ナニーとして多様なご家庭やお子さまと関わる中で、日々たくさんの気づきや学びをいただき、自分の考え方や生き方も柔軟になったように思います。また、これまでの人生で大切にしてきた「人としてのあり方」を、ナニーという仕事では評価していただけることもありがたく感じています。どんな仕事も社会に貢献するものですが、目の前のお客さまを直接お支えするナニー業務では、私が大切にしてきた誠実さ、丁寧さ、細やかさといった人間性そのものを、お子さまやご家族に受け取っていただけます。

人は、生まれてきたからには誰かの役に立ち、何かを与える使命があるのだと思います。そして、それができることに喜びを感じています。ナニーという仕事は、自分の生き方と職業がぴたりと重なった、まさに天職なのかもしれません。

トラブルを乗り越える秘策は、事前確認と自分自身をアップデートする意識

―大変だったことと、乗り越えた方法を教えてください

スポットで初めてうかがった、5歳の男のお子さまのお世話ではいくつかのピンチを経験しました。幼稚園のお迎えから寝かしつけまでのご依頼で、運転手さんの車でご自宅へ向かう途中から、少しずつご機嫌が悪くなられていきました。人見知りに加え、お気に入りのパン屋さんが閉まっていたこと、さらにマンションの鍵のトラブルでロビーで1時間以上待つことになったことが重なったためです。私は普段から、初めてのお子さまのお世話では、コミュニケーションのきっかけにもなるお遊びグッズを持参しています。このときも、手持ちの車のシールを待ち時間にお見せすると、興味を持って遊んでくださいました。

お夕食はマンションの下にあるスーパーで、お好きなお惣菜を選んでいただく予定でしたが、鍵のトラブルでお部屋から出ることができず「お腹すいたー!」と訴えられる事態に。そこで、保護者様の許可を得て、他のお宅のお世話で利用経験のあるデリバリーアプリを使い、急きょお食事を手配しました。

その後、予定より2時間遅れての入浴となりました。お子さまが逃げ始めたときには、私自身も焦る気持ちがありましたが、「落ち着いて」と自分に言い聞かせ、必要以上に言葉を重ねず、お子さまのペースを尊重しました。「好きな遊びが終わったら、お風呂に入ろう」と提案すると、納得してくださり、無事に入浴することができました。最新設備の浴室の操作に四苦八苦しながら入浴介助をしていると、今度はシャワーを私にかけてくるお子さま。別のお子さまのお世話でも同じような経験があったため、「ナニーさん、びしょびしょで帰れなくなっちゃうなー。〇〇くんのかっこいい車で送ってくれるの?」と困った顔をしてみせると、いたずらをやめてくださいました。いたずらを静止するときも、ただ叱るのではなく、いわば「女優」になって、そのお子様に響きそうな言葉や伝え方を工夫しています。

こうした経験を通して、トラブルが起きたときこそ、私自身が不安定になるのではなく、自分を律し、そのときにできる最善の対応をすることが大切だと実感しました。そのためには、コンシェルジュやお客様との事前確認を徹底し、起こり得る出来事をできる限り想定してお世話に臨むこと。そして、最新のアプリやサービスなどにもアンテナを張り、必要なものは“仕事道具”として実装しておく。常に自分自身をアップデートしていく意識を大切にしています。

↑お世話に持参するお遊び道具は、年齢、性別ごとにパッキング。中身は小さなおもちゃや絵本や工作の素材など、お子様を楽しませる工夫が満載のラインナップです。

これからも誠実に、心のこもったインフラであり続ける

―今後の目標を教えてください

現在ナニー13年目ですが、まずは20年という節目まで誠実に歩み続けたいと考えています。これからも、ご家庭にとって絶対に揺るがない“心のこもったインフラ”であり続けたい。そのためにも、心身の健康を保つこと、学び続けること、信頼できる方とのつながり、そして自分自身の生活を大切にしていきたいです。他者に寛容でいるために、自分の心の栄養になるような旅や、中途半端になっている英語や書道、ピアノを学び直したりしながら、自分の心を満たしていくことも大切にしたいです。

また、ナニーという職業の専門性や社会的な価値をより多くの方に知っていただきたいと考えています。ナニーは、幼稚園やお教室、習い事など、さまざまな場所で多くの方と関わります。その姿を見たときに「安心して任せられる存在」と認識して頂けるよう、言葉遣いや礼儀、安全への配慮を常に意識しています。こうした日々の積み重ねが、ナニーという仕事の価値を社会に伝えることにつながると信じています。

そして、いつかナニーとしてのお仕事が難しくなったときには、これまで積み重ねてきた経験を次の世代につなげる存在になりたいです。初めての子育てに奔走するお母さまや、ひとり親家庭の方に寄り添ってお話を聴き、一緒に考えたり、孤独を和らげたりするような。これまでナニーとして培ってきたものを生かし、地域の方々のために貢献することでバトンをお渡しできたらなと思っています。

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インタビュー後記


インタビューをお願いすると、事前にナニーの仕事への思いをたくさん綴ってお送りくださったKさん。高い意識と仕事やお子さまへの愛情に裏打ちされた言葉を丁寧に選びながらお話される姿に、「誠実に生きる」ということは特別なことではなく、日々の小さな選択の積み重ねなのだと感じました。

あなたも、ナニーのお仕事を始めてみませんか?ご興味のある方はぜひこちらをご覧ください→

この記事を書いた人

吉尾夏紀
新聞社(記者職)、広告代理店勤務を経て「もの書き屋 きりんとバオバブ」として独立。 乳幼児3人を育てるシングルマザー。育児における座右の銘は「センス・オブ・ワンダー を探して」。2025年4~9月、国の居宅訪問型保育事業としてポピンズナニーサービスを利用

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